「看護系の小論文の書き方って、どうするの?」こんな悩みはありませんか。
医療・看護系の小論文では、単なる知識の羅列ではなく、患者への共感力やチームで物事を行う論理的思考力が問われます。
この記事では、看護師試験での小論文のテーマや出題傾向、また形式として最も多い800字の例文まで、医療現場で求められる人材像を踏まえた効果的な書き方を解説します。
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医療・看護での小論文の書き方
医療・看護系の小論文では、単なる知識の暗記では通用しません。
採用担当者は受験者の人間性や将来性を見極めるため、以下の観点から総合的に評価します。
採用側が見ていること
採用担当者が最も重視するのは、受験者の内面的な資質です。
小論文を通じて、その人がどのような価値観を持ち、患者とどう向き合うのかを読み取ろうとしています。
特に看護師として必要な共感力や倫理観、そして困難な状況でも冷静に判断できる論理的思考力が問われます。
また、医療現場では多職種との連携が不可欠なため、自分の考えを相手に分かりやすく伝える表現力も評価対象となります。
さらに、基本的な医療知識から最新の医療動向まで、幅広い知識を持っているかも確認されるでしょう。
これらの要素が総合的に評価され、その病院が求める人材像にマッチするかが判断されます。
医療・看護の現状と課題を考える
現代の医療は治療中心から予防重視へとパラダイムシフトが進んでおり、看護師の役割も大きく変化しています。
生活習慣病の増加や高齢化社会の進行により、病気を未然に防ぐ予防医学における看護師の専門性がますます重要になっているのです。
具体的には、地域住民への健康教育や生活指導、健康診断の普及促進などが挙げられます。
病院内での治療だけでなく、地域に出向いて健康相談を行ったり、学校や企業での健康管理にも携わったりする機会が増えています。
このような現状を踏まえ、看護師には医療の専門知識だけでなく、コミュニケーション能力や教育スキルも求められるようになりました。
志望先の現状と課題も知っておく
志望する病院や施設の特徴を理解し、そこで働く看護師が直面する現実的な課題について深く考えることが重要です。
特に終末期医療に携わる場合、現在の医学では根本的な治療が困難な疾患と向き合わなければなりません。
末期がんやALS患者さんの身体的・精神的苦痛を完全に取り除くことは不可能な現実があります。
しかし、だからといって何もできないわけではありません。
痛みの緩和ケアを充実させたり、患者さんやご家族の心のケアに力を入れたり、残された時間をその人らしく過ごせるような環境づくりに貢献できます。
また、医療技術の発展に向けた臨床研究に参加することで、将来的な治療法の確立に寄与することも可能です。
現実を受け入れながらも、できることを最大限に追求する姿勢が求められています。
現実との整合性とそれをどう改善していくのか
理想と現実のギャップを認識し、それをどのように埋めていくかを具体的に示すことが小論文では重要です。
医療現場では人手不足や医療費増大、患者さんの価値観の多様化など、様々な制約の中で質の高いケアを提供しなければなりません。
このような状況下で、まずは自分自身のスキルアップを図り、効率的で質の高い看護を実践することから始められます。
チーム医療における連携を強化し、他職種との協働を深めることで、限られた資源を最大限に活用することも可能です。
さらに、看護研究や質改善活動に積極的に参加し、根拠に基づいた看護実践を推進することで、医療の質向上に貢献できるでしょう。
現実的な制約を理解した上で、段階的かつ持続可能な改善策を提案することが評価につながります。
これは二律背反的でかなり難しいことですが、こういった現状と課題からどのようにすればよいのかということを普段から意識してみましょう。
看護師試験での小論文のテーマ(3カテゴリー)
看護師採用試験の小論文は、出題内容によって大きく3つのカテゴリーに分類されます。
それぞれの特徴と対策方法を理解しておくことで、どのようなテーマが出題されても冷静に対応できるようになります。
① 自分自身に関するもの
自分自身をテーマとした小論文は、看護師採用試験で最も頻繁に出題される分野です。
解答条件なしの例題
- 「あなたの看護観について述べなさい」
- 「理想の看護師像とは、どのようなものか書きなさい」
解答条件ありの例題
- 「実習経験を踏まえて看護師としての成長を論じなさい」
- 「あなたの強みを具体的なエピソードとともに述べなさい」
条件なしの場合は自由度が高い分、自分の価値観や経験を整理して論理的に展開する必要があります。
一方、条件付きの場合は指定された条件を満たしながら、求められている内容を的確に伝えることが重要です。
いずれの場合も、実習や学生生活での具体的な体験談を交えることで、説得力のある文章になります。
② 医療・看護に関するもの
医療・看護分野のテーマは、受験者の専門知識と看護師としての姿勢を同時に評価する出題です。
解答条件なしの例題
- 「チーム医療について、あなたの考えを述べなさい」
- 「高齢化社会における看護の役割について書きなさい」
解答条件ありの例題
- 「臨地実習で経験した倫理的ジレンマについて、事例を挙げて論じなさい」
- 「予防医学における看護師の役割を具体例とともに述べなさい」
この分野では、単なる知識の羅列ではなく、学んだ知識を実際の看護場面でどのように活用するかが問われます。
医療用語を使う際は、その意味を正確に理解した上で使用し、読み手に分かりやすく説明することが大切です。
最新の医療動向や社会の変化に対する看護師の役割についても考察できると高評価につながります。
③ 社会に関するもの
社会情勢をテーマとした小論文は、看護師として社会の変化に対応できる視野の広さを評価する出題です。
例題
- 「働き方改革が医療現場に与える影響について書きなさい」
- 「災害医療における看護師の役割はどのようなものか、あなたが看護師になった立場で考えなさい」
- 「SNSの普及とコミュニケーションの変化は、医療現場にどうかかわるのか述べなさい」
これらのテーマでは、社会問題を正確に理解し、看護師の立場からどのような貢献ができるかを具体的に示すことが求められます。
日頃からニュースや新聞に目を通し、医療に関連する社会問題について自分なりの考えを持っておくことが重要です。
単なる問題提起で終わらず、実現可能な解決策や改善案を提示できると印象的な小論文になります。
それぞれの書き方
自分自身に関するテーマでは、体験談を中心とした具体的なエピソードを盛り込み、そこから学んだ価値観や今後の目標を明確に示します。また医療に関連のある社会問題から考えてみることも有効です。
医療・看護に関するテーマでは、専門知識を適切に活用しながら、実際の看護場面での応用方法を具体的に説明します。
理論と実践のバランスを取りながら、看護師としての専門性をアピールすることが重要です。
社会に関するテーマでは、社会情勢の現状分析から始めて、看護師としてどのように社会貢献できるかを論理的に展開します。どのテーマでも、読み手が納得できる根拠と具体例を示すことが高評価につながります。
小論文の基本おさらい
小論文の基本的な書き方について、おさらいしておきましょう。「もう基本はいいよ!」という人も、今いちど見直してみてください。
小論文の基本構成
小論文を書く基本になります。ここができていないと合格できる小論文は書けないので、改めて見てみましょう。

書くルール
書くルールに沿っていないと減点が続出し、合格が遠のくので見てみましょう。

評価ポイント
書く側からすれば気にならないことでも、採点者からすれば気になることもあるので、あらかじめ採点者の視点も見て合格できる小論文を書いていきましょう。
以下、大学入試の評価基準ですが、医療看護の小論文にも当てはまりますのでご覧ください。

時間配分
実際の試験では書く時間配分が最も大切です。いくら良い解答が思い浮かんでも、試験時間内に書けなければ未完成扱いをされるので、時間配分についても見ていきましょう。

看護小論文での800字の解答例文
理想の看護師像について論じる際は、具体的な体験や価値観を交えながら、患者との関わりの中で大切にしたい姿勢を明確に示すことが重要です。
以下では、小論文の書き方から解答例まで、体系的に解説します。
例題(理想の看護師像)
この問題は、看護師を志す動機や価値観を問うものです。
単なる理想論ではなく、具体的な根拠や経験に基づいた現実的な看護師像を示すことが求められます。
患者の立場に立った思考力と、専門職としての責任感を持った看護師像を描くことが重要でしょう。
考え方、書く手順(4ステップ)
① 看護師を目指すきっかけとなった体験や価値観の整理
② 理想の看護師像を一言で表現できる考えを決める
③ ②の根拠を2つほど挙げる
④ 理想像へ向けて自分がどう成長したいか将来の展望を書く
まず、自分が看護師を目指すきっかけとなった体験や価値観を整理します。
次に、理想の看護師像を一言で表現できる核となる考えを決めます。
その後、なぜそう考えるのかという根拠を2つほど準備し、具体的な体験や事例を交えて説明できるようにします。
最後に、その理想像に向けて自分がどう成長したいかという将来への展望を考えます。
構成は問題や解答の書き方に沿って、4ステップの文言を変えて(③だけはどの問題でも共通で)考えてみましょう。
構成例
上記の書く手順にしたがって書いていきます。
① 看護師を目指すきっかけとなった体験や価値観の整理
- 祖父の入院体験、認知症を患った祖父は、環境の変化で混乱し、時として看護師に対して強い口調で話す。
- 看護師は祖父の言葉を最後まで聞き、祖父のペースに合わせて対応していた。その結果、祖父は徐々に落ち着きを取り戻し、治療にも協力的に。
② 理想の看護師像を一言で表現できる考えを決める
患者一人ひとりの心に寄り添い、その人らしい生活を支える看護師。
③ ②の根拠を2つほど挙げる
1.患者に寄り添う看護師は、技術面でも優れた成果を発揮する。患者が安心して治療を受けられる環境を作ることで、治療効果の向上にもつながるから。
2.患者の生活背景や価値観を理解することで、退院後の生活を見据えた指導や支援も可能になる。
④ 理想像へ向けて自分がどう成長したいか将来の展望を書く
- 患者との対話を大切にし、常に相手の立場に立って考える姿勢を身につけたい。
- 患者一人ひとりにとって最適な看護を提供できる看護師を目指したい。
上で書いたことを解答を書く順番で書くためにアウトラインを作成します。実際の試験ではアウトラインから書き、カッコの内容は省略して書きましょう。
アウトライン作成例
【序論】
(② 理想の看護師像を一言で表現できる考えを決める)
患者一人ひとりの心に寄り添い、その人らしい生活を支える看護師。
(① 看護師を目指すきっかけとなった体験や価値観の整理)
- 祖父の入院体験、認知症を患った祖父は、環境の変化で混乱し、時として看護師に対して強い口調で話す。
- 看護師は祖父の言葉を最後まで聞き、祖父のペースに合わせて対応していた。その結果、祖父は徐々に落ち着きを取り戻し、治療にも協力的に。
【本論】
(③ ②の根拠を2つほど挙げる)
1.患者に寄り添う看護師は、技術面でも優れた成果を発揮する。患者が安心して治療を受けられる環境を作ることで、治療効果の向上にもつながるから。
2.患者の生活背景や価値観を理解することで、退院後の生活を見据えた指導や支援も可能になる。
【結論】
④ 理想像へ向けて自分がどう成長したいか将来の展望を書く
- 患者との対話を大切にし、常に相手の立場に立って考える姿勢を身につけたい。
- 患者一人ひとりにとって最適な看護を提供できる看護師を目指したい。
あとはアウトラインに、「例えば」「つまり」「そこから何が言えるのか?」「なぜそう言えるのか?その理由は?」などと自問自答しながら肉付けするかたちで解答を書いていきます。
解答例(800字以内)
上記のアウトラインをもとに、800字以内(720字以上~800字以下)で解答を書きます。
【解答例】
私が考える理想の看護師像は、患者一人ひとりの心に寄り添い、その人らしい生活を支える看護師である。このためには技術的な専門性はもちろん重要だが、生活背景や価値観など患者の気持ちを理解し、尊厳を大切にした看護を提供することが最も重要だと考えている。
この考えを持つようになったのは、祖父の入院体験がきっかけである。認知症を患った祖父は、環境の変化で混乱し、時として看護師に対して強い口調で話すことがあった。しかし、ある看護師は祖父の言葉を最後まで聞き、「不安な気持ちはよく分かります」と共感を示しながら、祖父のペースに合わせて対応していた。その結果、祖父は徐々に落ち着きを取り戻し、治療にも協力的になった。この経験から、患者の心情を理解し、個別性を重視した看護の重要性を実感した。
患者に寄り添う看護師は、技術面でも優れた成果を発揮すると考える。患者が安心して治療を受けられる環境を作ることで、治療効果の向上にもつながるからだ。また、患者の生活背景や価値観を理解することで、退院後の生活を見据えた指導や支援も可能になる。例えば、糖尿病患者に対して一律の食事指導をするのではなく、その人の生活スタイルや家族構成を考慮した実践的なアドバイスを提供することで、継続的な自己管理につなげられる。このような個別性を重視した看護こそが、患者の生活の質向上に貢献し、真の意味での健康回復を支えると考える。
理想の看護師になるため、私は患者との対話を大切にし、常に相手の立場に立って考える姿勢を身につけたい。また、多様な価値観を持つ患者に対応できるよう、単に看護や医療の知識にとどまらない幅広い知識と柔軟な思考力を養い、患者一人ひとりにとって最適な看護を提供できる看護師を目指したい。(729字)
書く準備を整える
看護小論文で高い評価を得るためには、事前の準備が不可欠です。
過去問の分析から添削まで、段階的に準備を進めることで、本番で実力を発揮できるようになります。
過去問の確認
志望先の過去問を入手することは、小論文対策の第一歩となります。
多くの医療機関では公式サイトや説明会で過去問情報を公開していないため、口コミサイトや先輩からの情報収集が有効です。
志望先の過去問が入手できない場合は、他の病院や医療機関で公開されている過去問を活用しましょう。
看護小論文の出題傾向は、自分自身に関すること(看護観、理想の看護師像など)、医療・看護に関すること(チーム医療、患者の権利など)、社会に関すること(高齢化社会、医療費問題など)に大きく分かれています。
これらの分野から幅広く練習することで、どのようなテーマが出題されても対応できる力が身につきます。
書き方は参考書を活用する
看護小論文の書き方を身につけるためには、参考書を活用した体系的な学習が効果的です。参考書には出題されやすいテーマや具体的な解答例が豊富に掲載されており、文章構成のパターンを効率的に学ぶことができます。
また、原稿用紙の使い方や文章の基本ルールなど、小論文の基礎知識も確認できるため、1冊は必ず手元に置いておきましょう。
重要なのは参考書を読むだけでなく、実際に原稿用紙を使って時間を測りながら書く練習を繰り返すことです。
最初は手が止まってしまうかもしれませんが、継続的な練習により文章力と時間配分の感覚が身につき、本番での実力発揮につながります。
時事問題など、新聞やニュース記事をチェックしておく
看護小論文では、現代社会が抱える医療問題や時事問題に関連したテーマが出題されることが多いため、日頃から新聞やニュース記事に目を通しておくことが大切です。
特に、高齢化社会における看護師の役割、医療費増大問題、在宅医療の推進、医療安全対策などは頻出テーマとなっています。
日本国内の動向だけでなく、世界保健機関(WHO)の動向や海外の医療制度改革なども把握しておくと、より深い視点から論述できるようになります。
ニュースを読む際は、その問題の背景や原因、解決策について自分なりの考えを整理し、看護師の立場からどのような貢献ができるかを常に意識することで、小論文に活用できる知識として定着させることができます。

書いたら添削を受ける
小論文は自分で客観的に評価することが難しいため、第三者による添削を受けることが上達への近道です。
学校のキャリアセンターや先生に依頼できれば最も理想的ですが、家族や友人、同僚に頼むことも可能です。
また予算があればココナラなどの添削サービスや、より専門性のある添削サービスを利用することもできます。
添削者は、論理的な構成ができているか、主張に説得力があるか、誤字脱字はないかなど、様々な角度から文章をチェックしてくれます。
自分では気づかない弱点や改善点を指摘してもらえるだけでなく、読み手の立場に立った貴重な意見も得られるでしょう。
添削を受けた後は、指摘された点を踏まえて再度書き直し、継続的な改善を図ることが重要です。このサイクルを繰り返すことで、文章力が着実に向上し、説得力のある小論文が書けるようになります。
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