「小論文って、そもそもどんなもの?」「作文とどう違うの?」というのは受験生からよく聞かれる質問です。
これは大学入試、就職試験、昇進試験にかかわらず小論文の試験を受けようとする受験生に共通の疑問といえるでしょう。
しかし、この「小論文とは何か?」ということを知らずして、合格はないと思ってください。小論文の基本構成が分からずに、小論文の試験で合格点を取ることは絶対にできません。
反対に、小論文の基本が分かっている人は、他の受験生の50パーセントより上位にある状態といえます。
大学入試、就職試験、昇進試験にかかわらず、まずは他の受験生の50パーセントより上に行くために、小論文の基本構成や書き方を押さえていきましょう。
小論文とは何か?作文との違い
まず「小論文とは何か?」どんな文章のことを言うのか、作文との違いは何かについて見ていきましょう。
そもそも小論文ってなに?
そもそも「小論文ってなに?」「作文とどう違うの?」と思っている人も少なくないかと思います。
簡単に言えば、小論文とは「私は〇〇だと考える」「なぜなら○○だからだ」という「自分の意見」と「その理由」で成り立つ文章をいいます。
この理由は「内閣支持率が○○%」「〇〇という出来事」という誰が見ても「そうだね」という客観的事実から自分の意見を述べます。
読んだ人が「なるほど、確かにそう言えるね」という説得力のある文章が求められます。
大学などで書く論文は、数万字にも及ぶ文章で自分の研究結果や意見を理由をもとに述べて、読む人に「なるほど!」と思わせる文章を書きますが、この論文を800~1000字くらいの小さな規模で書く文章を小論文と呼びます。
「うわ、それでも800~1000字も書かなきゃいけないの?」と思ったかもしれません。私も学生時代「うわ~ダルいわ」と思ったので、その気持ちはよく分かります。
でも、書く練習をしていくと、このくらいの字数は簡単に埋まっていくので安心してください。
作文との違い
一方、作文というのは「〇〇だと感じた」などの感情を、理由なく表現してもいい文章です。
読んだ人が「感動した!」と思えるような表現力豊かな文章が求められます。
私も小・中学校の時代に選ばれた人の作文を、教室や全校集会で聞かされましたが、その文章の情景が心に浮かんで「やっぱり選ばれるだけあるな~」と感動したものです。
ただし、小論文と作文の違いはハッキリしているので、良い作文が必ずしも良い小論文とは限りません。
むしろ良い作文でも、「感動したのなら、なぜ感動したのか」の明確な理由がない文章は、小論文ではダメな文章となります。
小論文 : 意見とその理由で構成される文章。
説得力が求められる。文才はとくに必要なし。
作文 : 自分の感じたことを表現力豊かな文章で書く。
正直言って小論文は作文と違い、書き方に明確なルールがあるので、ときに面白味に欠けるところがあります。
だからこそ、適切な方法で練習すれば、少なくとも義務教育を終えた人ならば、誰でも書けるようになるという大きなメリットがあります。
反対に不適切な方法や指導者にしたがって書く練習をしても、いつまで経っても書けるようにならないので、その点は気を付けましょう。
小論文の基本構成や書き方について
ここでは、小論文の基本構成や書き方について見ていきます。
形式ばっていて面倒くさいところもありますが、これができていないと合格点を取れる小論文は書けないので、しっかりと見ていきましょう。
小論文の基本構造
まず小論文の基本構造は、「序論・本論・結論」の3部構成となります。
小論文の基本構造:序論 → 本論 → 結論
作文のように起承転結ではありません。
「小論文は起承転結!」と言っている参考書は、もうほとんどありませんが、10年くらい前までは平気でこういう参考書が書店に並んでいました。
もし、いまだに「小論文は、序論・本論・結論または起承転結」などという小論文の参考書があったら、それはもう捨ててください。
そのような前提が間違っている指導では、しっかりした小論文は書けないので。
話が少しそれましたが、小論文の「序論・本論・結論」の構成で、まず序論では「問題提起または自分の意見」を主張し、本論で「その具体例と根拠(理由)」を示し、結論で「意見のまとめ」をします。
序論:「私は〇〇だと考える。なぜなら〇〇だからだ」「〇〇と言われている」《問題提起または自分の意見》
本論:例えば○○。具体的には〇〇。《その具体例と根拠(理由)》
結論:したがって○○だと考える。《意見のまとめ》
この構成は書き方によって、序論でまず意見を述べるか、あるいはまず問題提起をするかは異なるので一概に言えず、下の見出しの「基本の書く型」で説明しますが、上記が小論文の基本構成となります。
起承転結という聞きなれた構成と違うので、戸惑いもあると思いますが、慣れてしまえば起承転結よりも簡単な構成ですので、まずは「序論・本論・結論」の構成で書き慣れていきましょう。
主語が自分の場合は「私」で書く
次に小論文を書くときの主語が一人称(自分)の場合、「私」で書きます。
作文は「僕は」「俺は」と書いても許されますが、小論文は「私」で統一します。
また、とくに体育会系や自衛隊、消防、警察志望の人は「自分は〇〇である」と書いてしまいがちですが、性別やどの試験でも関係なく小論文であれば自分を「私」と書きます。
実際、「僕は」「俺は」「自分は」と書かれた答案を見ると、いくら内容がしっかりしたものでも、子供っぽく見えてしまいます。
こういう時は大人ぶってもいいので、ひとりの大人の立場で自分のことを「私」と書きましょう。
「だ・である」調、人物は呼び捨て
また文章の語尾は「だ・である」「です・ます」どちらがいいですか?との質問がありますが、小論文は「だ・である」調で書きます。
そして福沢諭吉などの歴史上の人物を挙げるときや、目上の人を挙げて書くときも敬称略(呼び捨て)で構いません。
もし敬称略で気が引けるのであれば「〇〇氏」や「〇〇教授」などの肩書をつけます。
この辺の細かいルールは、とくに小論文を初めて学習する人には面倒だと感じるところですが、こういうつまらないところで減点されるのはもったいないので、しっかりと踏まえておきましょう。
おさらい
・小論文の基本構成は、序論・本論・結論
・主語が自分の場合は、「私」で統一
・「だ・である」調で書く
・人物は敬称略(呼び捨て)
基本の書く型
この基本の書く型さえ覚えておけば、どのような問題にも対応できる構成パターンについて見ていきます。
結論先行・サンドイッチ型
序論:私は〇〇だと考える。
本論:なぜなら○○だからだ。例えば○○。
結論:したがって、私は〇〇だと考える。
序論で自分の考えを表明して、本論でその根拠(理由)を示し、結論で再度自分の考えを示して文章をまとめる書き方です。
問題提起・結論先行型
序論:〇〇だということが言われている。私は〇〇だと考える。
本論:確かに〇〇である。しかし○○である。
結論:したがって、私は〇〇だと考える。
序論で「社会的なできごとや事実」という問題提起をして、それに対する自分の意見を示します。
その後、本論で根拠や他の具体例を挙げ、結論で再び自分の考えを示して文章をまとめる型です。
問題提起・結論中局型、終局型
序論:〇〇だということがある。
本論:確かに〇〇である。しかし(私は〇〇だと考える)である。なぜなら〇〇
結論:したがって、私は〇〇だと考える。
序論で「社会的なできごとや事実」という問題提起をして、本論でそれにたいして自分の意見表明または、そのできごとを肯定できる事実あるいは反論する事実を挙げ、結論で自分の考えを示して文章をまとめる型です。
この型は、書き方によって本論で自分の意見を示すか示さないかは変わるので、1つの型で2パターンの書き方にわかれます。
よく他の指導者の方は、無理やり一つの書く型で受験生に書かせようとする向きがありますが、これでは「ある問題の聞き方」ならば、その書く型で書けるが、別の問題や「同じ趣旨の問題でも別の聞き方」をされると対応できなくなる恐れがあります。
そうなると、その書く型に合う問題が出題されるかどうかで、最悪合否が決まってしまうという完全な運試しになるので、どのような問題や聞き方をされても確実に書けるように、上記の書き方のパターンを覚えておきましょう。
いきなり全部の書く型を覚えるのは難しいでしょうから、とりあえず「自分の考え」を先に書く型と、一番最後に書く2つのパターンがあることだけ覚えておきましょう。
小論文って、どんな問題が出るの?
小論文では、大まかにどのような問題が出るのかについて見ていきます。これを知るだけでも、小論文の書き方の方向性が見えてくるはずです。
未解決の社会問題
「○○大学でどのような問題が出た」「〇〇社の採用試験でどのような問題が出た」といっても、その大学や企業を志望していない人には関係がなく、いまいちピンとこないと思いますので、大きくどのような問題が出るのか見ていきます。
小論文は、どのような問題が出るのかズバリをいうと「未解決の社会問題」です。
今現在で問題が解決しておらず、現在および将来の社会にとって重要な問題が扱われます。
問題の答えが簡単に出ず、賛否が分かれるものや結論にいたっても明確な答えが出ない問題もあるでしょう。
あるいは「自分は大学で何を学んで、5年後、10年後どうなりたいのか?」や「会社に入って何をしたいのか?」という問題も、個人的な社会問題といえます。
また昇進試験の小論文でも、今現在の会社の問題が扱われることが多く、それにたいしての解決法が求められます。
このような視点で、大学入試、就職試験、昇進試験にかかわらず、あなたの志望先の過去問題を見てみると納得がいくと思います。
問題を自分の頭で考えて、間違っているかどうかはわきに置いて明確な根拠をもとに答えを出して欲しいというのが出題者の求めていることです。
私が採点者の立場でも、そう考えますし、受験生の考えに「ん?どいうこと」と思っても、根拠がしっかりしたものならば「なるほど、そういう視点や考えがあるんだ」という採点者にとっての新たな学びにもなります。
もちろん、上記の答案は高評価です。
日頃からニュースや新聞を読んでみる
小論文の練習始めは、まず社会の出来事に関心を持つということです。
そのために、他の小論文の指導者の方や参考書でも「ニュースを見たり、新聞を読んでみる」と言われます。
手垢が付きすぎて、くどいようですがこれはその通りです。
社会的なできごとや事実を知らずに、小論文は書けないと言っても過言ではありません。
まずは新聞の一面で気になった記事を毎日読んでみる。テレビのニュースを数分見てみる。ヤフーの「トピックス一覧」の上から2つ、3つの記事を読んでみるなどしてみましょう。
初めは面倒でダルいですが、こういった作業を毎日していくと自然と自分の中に読んだ内容にたいして思うことが芽生えてきます。
問題を考える練習
ニュースを見る習慣がついてきたら、次にニュースに対して自分はどう考えるかを考えていきましょう。
問題を考える練習として、テレビやインターネットのニュース、SNSでの出来事でもよいので、「それを見て何を考えたか?」「なぜそう考えたのか?」を考えてみましょう。
考えが浮かばないのであれば、とりあえず何となく思ったことでもいいです。その思ったことを「なぜそう思ったか?」を考えてみましょう。
「自分の考え」と「その理由」が小論文の基本なので、本記事からこの1つだけでも持ち帰って、ぜひ今日から実践してみてください。
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