そもそも、小論文はどんな問題形式で、どんなテーマが出されるのかは受験生の皆さんの大きな関心ごとだと思います。
今回は、大学入試で頻出する問題形式やテーマをもとに見ていきます。
これら問題形式やテーマをあらかじめ知っておくことで、小論文の問題に対する書き方の上達度がグンと上がることは間違いありません。
もちろん、その上でみなさんの志望する大学で実施された試験の過去問を把握して練習する必要があります。
ただ、どの大学、学部・学科で実施される小論文の試験でも、大学入試における小論文のテーマ一覧やその基本を知っておくことで、書き方の基礎が身に付き、その後の過去問を用いた練習もスムーズに進みますので、ぜひ見ていきましょう。
小論文は、どんな問題形式があるのか?
頻出テーマを見る前に、小論文の問題形式にはどのようなものがあるのかについて見ていきます。
この問題形式をあらかじめ知っておくことで、試験当日に予想外の問題が出されたとしても慌てずに答えることができるようになりますので、しっかり見ていきましょう。
問題形式は、大きく5類型ある
まず大学入試での問題形式は、以下の5類型になります。
➀ 設問指示型 | 短い問題文で設問の指示にしたがって答えさせる。その中で、答える指示が細かく示される指示詳細型とあまり指示が示されない自由記述型がある。 |
② 課題文型 | 指定された課題文を読んで、問題に沿って自分の意見を答える。1つまたは複数の課題文が提示される場合や、意見を答えさせる前に要約をさせる場合がある。 |
③ 資料提示型 | 1つまたは複数の資料を提示して答えさせる問題。おもに統計グラフや数値が示されるが、中には写真や絵画、広告などが資料として扱われる場合もある。 |
④ テーマ型 | 絵や写真が出され、そこから読み取れることを答えさせる。 |
⑤ 志望理由型 | 学部学科の志望利用を答えさせる問題。たんに志望する理由だけではなく、学部学科に関係する視点や、「あなたは本学部でどのようなことを学び、卒業後はどうなりたいと考えているのか」という未来のビジョンが問われることもある。 |
いずれにしても、どの問題形式でも上記の5類型に入るので、自分の志望校の問題がどの問題形式にあてはまるのか、まずは把握しましょう。
志望先の過去問が、どの問題形式にあてはまるかを見る
まずは自分の志望校の過去問題を手に入れましょう。
赤本(教学社)を学校や書店で入手して過去問を見てみます。
リアルの書店ならば、この時点で買わなくても小論文の過去問のページだけを見てみます。
小論文の問題がフルに書かれていて数年分があれば、購入をしましょう。また学校で借りられる場合は、買わずに借りましょう。
それでも分からない場合は、まずは大学のホームページを見て過去問が掲載されていないかを確認します。
もし小論文の過去問が掲載されていない場合は、ホームページのお問い合わせで聞いてみる、電話やメールで問い合わせてみるという方法もあります。
いずれでも過去問が入手できない場合は、志望先と同じ学部・学科で他大学の公開されている問題を見てみます。
それらで過去問が入手できたら、その問題がどの問題形式にあてはまるのかを見てみましょう。
問題形式がわかれば、その形式に合った練習方法で練習していけばよいので、効率よく書く練習ができるようになります。
大学入試の小論文テーマ一覧
ここでは大学入試でよく出される小論文のテーマについて見ていきます。
自分ならばこの問題について、今の時点で知らないことがあれば、「どう調べるのか?」「それぞれの問題に対して、どう考えるか?」ということを実際に小論文を書くつもりで考えながら見ていきましょう。
少子高齢化
文字どおり少子化と高齢化が同時に進んでいるのが日本の現状です。
基本認識としては、少子高齢化によって生産年齢人口が年々低下して、社会保障費の増大などの問題を引き起こしています。
この解決策として一般的に言われていることは、出生率を上げるための補助金の充実や待機児童の解消、とくに都市部ほど出生率が低くなることに対しての解決策が求められています。
しかし、そもそも出生率を上げる方法だけが解決策なのでしょうか。
少子高齢化というのは、それ自体が問題というよりも、そのことによって引き起こされる社会保障費の増大や、さまざまなインフラを維持するための人員などの不足が問題ということになります。
ただ、少子高齢化それ自体は止めることができないので、社会保障改革やインフラ維持など少子高齢化に合わせた社会を作っていくという発想もあります。
例えば、社会保障ならば今の制度では賦課方式といって、あなたが高齢者になった時に受け取る年金は、その時代の現役世代が納める年金保険料によって賄われます。
これは現役世代が高齢者に対して圧倒的に多い場合は有利ですが、今の時代のように高齢者の方が多くなる場合は、当然社会保障財政が厳しくなります。
したがって賦課方式から、自分で受け取る年金の保険料は自分で払うという積み立て方式に徐々に移行していくという制度改革も考えられます。
インフラ維持なども、少子高齢化に合わせた制度設計とその実施が考えられるでしょう。
また高齢者が、その豊富な育児経験から子育て中の親の悩みを聞いたり、他人の子どもの面倒をみる施設の設置など、子どもを産み育てやすい環境づくりが結果的に少子化への一定程度の歯止めになることも考えられます。
教育格差
家庭の世帯収入によって、塾に行ける子どもと行けない子どもが出てきて、その結果、高校や大学進学への環境が整った学校に入れないことにより学力格差が生まれます。
そして高校や大学も進学校や上位校に入れないことにより、将来の収入の格差にもつながってくという問題です。
しかし、近年は入試の専門化、システム化というのが進みすぎて、塾に行って学ばないと解けないような問題が出されることもあり、その入試のあり方にも問題があるでしょう。
また地方では、公立の学校しかなく、都市部では私立の学校や塾などが整っており、都市部の方が圧倒的に有利といわれることもあります。
もっとも、地方の公立学校の質が低く、都市部の私立の学校の質が高いというのは完全な偏見ですが、都市部と地方で教育の格差があることは間違いありません。
それならば地方と都市の教育格差を埋めていくことが必要です。
例えば、レベルの高い問題でも塾に行かずとも解けるような問題を入試で出題する、地方や都市など日本のどこにいてもオンライン授業を併用して、一定以上の質の高い教育を受けられるようにすることが考えられます。
また授業料の無償化などで、親の収入にかかわらず、望む学校に行くことができるような制度設計も必要でしょう。
環境問題
そもそも環境問題とは、地球にとっての問題ではなく私たち人類にとっての問題です。
よく「地球のために私たちができること」というフレーズを聞きますが、地球のためではありません。
地球は人類が存続しようが、滅ぼうが星としての寿命を迎えるまで、これからも存在するわけです。
したがって環境問題とは、地球や他の動物のためではなく、完全な人類の問題であるという基本認識を踏まえた上で見ていきましょう。
その中でも地球温暖化、森林伐採、オゾン層の破壊、酸性雨の問題は、環境問題の四大テーマといえるでしょう。
地球温暖化 | 二酸化炭素などの温室効果ガスの排出によって、著しい高温化などの異常気象や南極の氷が解けて、島しょ部が水没してしまうなどの問題。 |
森林伐採 | 森林の過度な伐採により、自然が破壊され生態系が崩れる。また過度な伐採は、腐葉土などがもたらす山間の水の吸収力を奪い、洪水や土砂崩れが頻発する原因にもなる。 |
オゾン層の破壊 | フロンガスなどによるオゾン層の破壊は、宇宙から降り注ぐ有害物質が増えることを意味する。また太陽の光がオゾン層によって緩和されなくなるので、地球温暖化に拍車をかける。 |
酸性雨 | 工場などによる有害な煙の排出で、大気が汚染される。また有害物質が酸性雨となって降り注ぐことで、建物の劣化や森林にダメージをもたらす。 |
上記は、どれも私たち人類が存続していくためには、真剣に考えなければならない問題となっています。
グローバル化
その中で、異文化理解や外国語教育、経済格差、またグローバル化のひずみで自国第一主義といった反グローバル化の流れも起きています。
とくに大学入試では、グローバル化の恩恵よりも負の側面が扱われることが多く、その解決策を模索できる受験生が求められています。
異文化理解 | 国際交流のなかで、異文化理解は切り離せない問題。文化や習慣、価値観の違いを理解しようとする姿勢が欠かせない。 |
外国語教育 | 世界的に活躍する人材には外国語の習得が求められる。ただし、それは母国語をきちんと身に付けた上で、しっかりと自分の考えを表明するという前提が必要。 |
経済格差 | 先進国と発展途上国での経済格差、世界の最富裕層の10%が全世界の所得の40%近くを占有している富裕層と貧困層の経済格差。 |
地方と都市の格差 | とくに日本では、首都への一極集中によって、資本・情報・ヒトなどがほとんど東京に集中する状態が続く。そのため、平均年収も都市部では高く、地方では低い。 |
これら見てきたテーマは、簡単に答えや解決策が出るわけではなく、「ダルく」なってきそうなのですが、いずれも皆さんの将来にとっても重要な問題ばかりなので、小論文ということを離れて考えてみても良いでしょう。
もちろん、その上で小論文で書くときは「どう考えて書くのか?」ということをしっかり考えていくと、深い考えの良い小論文が書けるようになります。
小論文のテーマに対する書き方はどうするの?
今まで見てきた問題形式やテーマをもとに、どのように考えて書いていけばよいのかを見ていきます。
分からないことは、まず自分で調べる
これは今後、あなたが社会に出るにあたっても必要になるスキルで、最も基本的なことですが、問題を見て、知らない分からないことは自分で調べましょう。
本番では調べることはできませんが、練習段階で知らないことは、新聞や本、グーグルなどで、どんどん調べてください。
その上で分からないことがあれば学校の先生などに聞きましょう。
そして、調べたことを自分なりに考えて、「なぜそう考えるのか?」まで人に言えるくらい考える力を鍛えてください。
物事を批判的に見る
まず批判的に見るとは、何でもそれは間違いと思うことではなく、世の中の大多数の見解は「本当にそうなのだろうか?」と考えてみることです。
「ネットやテレビ、新聞でこう言っている」ではなく、自分で考え直してみる作業が重要になってきます。
そのさいの考え方としては、その時点でテーマに対して「ネットやテレビ、新聞には書かれていない」自分の知っていること、あれば経験したことをもとに考えてみます。
その考えた上で、大多数の見解と同じ考えにいたったのであれば、それはあなた独自の考えとなり、試験でも十分に通用する答えとなるでしょう。
率直に自分の考えを表明する
最後に問題、テーマに対して自分の知っていること経験したことをもとに考えた結論は、率直に表明しましょう。
私自身もこの記事でかなり自分の見解を書いてしまいましたが、世の中には、あるテーマに対しての様々な見解があり、ここで示した私の見解も「本当にそうなの?」と思ってもらってかまいません。
テーマに対して様々な見解を踏まえて、自分なりにどう考えるのかという、考える過程がとても大切になってきます。
その上で、回りくどく言いまわしたり、カッコつけたりすることなく、率直に「〇〇だ」「〇〇である」と自信を持って書いてください。
こういうところで控えめに言う必要はありません。
「なんか、文句あるか!」という傲慢さはいけませんが、控えめというのは「自信のなさ」の表れと受け取られるので、小論文では「自分の考え」と「その理由」を素直に自信をもって書いていきましょう。
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