小論文には、「うん、まあこれは許される」というものから、「これは絶対にやってはいけない」という基本的なルールというものがあります。
とくに小論文を初めて書こうとする受験生の人には、「なんか、色々あって面倒くさい」と思うかもしれません。
でも、これは大したことではなく、誰でも覚えられるルールです。
むしろ、小論文の学習がある程度進んだ人が忘れがちのことかもしれません。
「小論文やってはいけないこと」は、受験にかかわらない基本的なルールから、受験のさいに必要な小論文のルールもあります。
これらは面倒に感じるかもしれませんが、小論文で合格点を取るための必須事項となっていますので、ぜひ小論文の基本的なルールについて押さえておきましょう。
小論文の基本的なルールについて
まず、小論文を書く際の基本的なルールについて見ていきます。これを踏まえると合格小論文に近づくだけでなく、正しい言葉遣いや整った文章が書けるようになり、採点者の文章に対する印象もよくなるので、見ていきましょう。
小論文の基本
小論文で主語が一人称(自分)の場合は、「私」で書きます。これは性別や試験区分にかかわらず「私」で統一します。
また、文章の語尾は「だ・である」調で書きます。
そして自分の意見を主張するときは、「~と思う」などの曖昧な表現ではなく、「~と考える」「~である」と言い切るようにしましょう。
人物名も敬称略(呼び捨て)で構いません。
つまり、小論文には「です・ます」調をはじめとする、尊敬語や謙譲語などは一切必要ないということです。
丁寧なことは悪いことではありませんが、慇懃無礼(丁寧すぎてかえって無礼)と言われるように、小論文でも丁寧すぎるとかえって印象が悪くなりますし、必要以上に文字数を取ってしまうので気をつけましょう。
書き言葉を使う
私もそうですが、みなさんも人と話をするときは当然話し言葉を使っているはずです。
しかし小論文では「書き言葉」を使います。
この話し言葉を書いて、即不合格になるということはありませんが、採点者のあなたの文章に対する印象が悪くなり、この話し言葉が多く使われていると不合格につながっていくので、しっかり見ていきましょう。
例
× マジで、ガチで 〇 本当に × めっちゃ 〇 とても
× ぶっちゃけ 〇 正直 × なので 〇 したがって、よって
× あと 〇 また、さらに × じゃなくて 〇 ではなく
× 私的には 〇 私は × しんどい 〇 つらい
× ヤバい 〇 とても良い・悪い、大変
この他にも、普段の学校や家庭での会話を、そのまま小論文の文章で書いていないか見直してみましょう。
「これ話し言葉かな?」と思ったら、検索で「〇〇の書き言葉」「の言い換え」などと入れて見てみましょう。
一番は学校の先生に聞いてみる、信頼できる人の添削で確認してみます。
い抜き・ら抜き言葉は使わない
ついつい会話で使ってしまいがちですが、こちらも文章で使うには不適切な言葉なので見ていきましょう。
例
× してる 〇 している × 食べれる 〇 食べられる
× 見れる 〇 見られる、見ることができる
× してるんだけど 〇 しているのだが
この辺の言葉遣いは本当に面倒くさいのですが、普段の会話での「い抜き言葉」や「ら抜き言葉」などをそのまま文章として書いていないか、確認してみましょう。
省略後や過剰にカタカナ語なども使わない
これも普段あまり意識せずに使っていると、小論文でも書きがちになるので気をつけましょう。
例
× ネット 〇 インターネット × サイト 〇 ウェブサイト
× 時短 〇 時間短縮 × バイト 〇 アルバイト
× エビデンス 〇 根拠、証拠、裏付け × サステナブル 〇持続可能な
ただし、コンビニは省略語ですが「コンビニエンスストア」と書かなくても、広く一般的に知られており、正式名を書いてしまうと原稿用紙の字数を大幅にとってしまうので、「コンビニ」と書いても大丈夫です。
また問題に省略語が書いてあれば、その省略語は使っても構いません。
このあたりは杓子定規に省略後は全部ダメということではなく、広く一般的に知られているかどうかが基準になります。
小学校の中学年くらいの子どもに、その省略後やカタカナ語を話して理解できるかどうかを基準にしてみるとよいでしょう。
もっとも、ここも確かめるのに一番の方法は、信頼できる人の添削です。
受験での小論文のルール
ここでは実際の受験に際して、踏まえておきたい小論文のルールについて見ていきます。細かいことですが、これを踏まえないと減点対象になってしまうので押さえておきましょう。
字数オーバーは絶対にダメ
最も基本的なことですが、指定の字数を1字でも超えてはいけません。
例えば、「800字以内」なら800字まで書くことができるので、801字は絶対にダメです。
原稿用紙の800字と書いてある行の行末まで、あるいは原稿用紙が800字分までしかなければ、そのマス目がある行末まで書くことができます。
書いている方からすれば、「熱意があるなら多少はみ出してもいいでしょ」と思うかもしれませんが、ルールに従って書いているかを見るのも小論文のポイントで、そのもっとも基本的なポイントができているかどうかは合否に直接影響します。
これは就職試験、ビジネスの企画書など公的ものなら、あらゆる文章に適用される基本ですので気をつけましょう。
〇〇字以内、〇〇字程度、〇〇字以上~〇〇字以下
小論文の指定字数で、〇〇字以内、〇〇字程度などの文字数はどのくらいを基準に書けばよいかというのも、意外と分からない受験生も多いのではないでしょうか。
まず基本的に「〇〇字以内」「〇〇字程度」「〇〇字以上~〇〇字以下」という指定字数にたいする書く基準は、指定文字数の9割以上10割以下です。
例えば、「800字以内」なら、800字の9割で800×0.9=720字以上、800字以下で書きます。
指定文字数が「800字程度」ならば、これも9割以上10割以下で書きます。
よく他の指導者の方が「〇〇字程度ならば、〇〇字のプラス・マイナス1割」と教えていますが、マイナス1割の9割以上は問題ありませんが、プラス1割まで書いてよいのかは基準がはっきりしていないので、やはり指定文字数の9割以上10割以下と考えて間違いありません。
最後に「〇〇字以上~〇〇字以下」は、上限である〇〇字以下の9割以上10割以下で書くことになります。
「800字以上~1000字以内」ならば、1000字以内の9割である900字以上、1000字以下となります。
この場合、下限の800字を少し超えたところで書き終えても、それで即不合格とはなりませんが、下限ギリギリの場合は、よほど内容が優れていないとかなり評価は下がります。
小論文の採点を行うある大学教授が「どんな内容でも、指定文字数の9割は書いてほしい」と言うのを聞いたことがあります。
このように採点者は、内容と文字量で受験生の答案を評価することを忘れないようにしましょう。
その他の受験でのルール
小論文は、試験でも原稿用紙に手書きで書いていきますので、原稿用紙の使い方を守るようにしましょう。これは、また別記事で説明する予定です。
原稿用紙の使い方の最も基本的なことだけ以下に書きます。
- 最初の1字と改行時は、1字下げて書く。
- 数字はタテ書きなら漢数字(一、二)、ヨコ書きならば算用数字(1,2)
- 横書きで数字を書く場合は、ひとマスに2字を書く。
- 「て・に・を・は」を冒頭に書かないようにする。やむを得ない場合は許容
- 「ゃ」「ゅ」「っ」などの拗音・促音もひとマスに1字で書く。
その他、「!」「?」などの記号や絵文字などは使わないようにしましょう。
また、「コツコツ」「スラスラ」などの擬音語や擬態語を使うことも避けましょう。
小論文に文学的表現や技巧などは必要ありません。カッコつけてこういう表現を用いると減点対象となってしまうので気をつけてください。
小論文やってはいけないこと
これを踏まえないで書いてしまうと「不合格は間違いなし」という、小論文のやってはいけないことについて見ていきます。
かなりキツい言葉を使いましたが、本当にこれをやってしまうと小論文ではアウトなので、ぜひ踏まえておきましょう。
問題を無視すること
基本的なことですが、問題の問われていることには、すべて答えましょう。
教員採用試験で、「あなたの目指す教師像とは、どのようなものか本県の教育理念をもとに答えなさい」と聞かれているのに、本県の教育理念を踏まえずに自分の目指す教師像を書いてしまう。
大学入試ならば「科学を学ぶ意義とは何か、あなたの考えを述べなさい」と聞かれても、科学の学ぶ意義を踏まえずに、科学に対するあなたの考えを書くなど。
聞かれていることには漏れなく、ストレートに答えるというのが基本です。
これは私もそうですが、問題を踏まえたつもりでも書いていくと忘れてしまうということがあります。
問題に通し番号をつけて、書きながら問題を再度確認していくことで「問題の聞かれていることに答えていない」という誤りを防ぐことができます。
問題の事実の前提を覆すこと
あまりこのような受験生はいませんが、他の参考書などの「問題はイエス、ノーで答える」という文言を鵜呑みにして、「〇〇(事実)ということがあるが、あなたの考えを述べなさい」という問題たいして、「その○○(事実)は間違っている」と答えてしまうことです。
もしこの問題に「その(事実)の真偽も踏まえて書きなさい」という但し書きがあれば、その事実に対して「イエス、ノー」で答えることもできますが、「真偽も踏まえる」という条件がない限り、問題の事実の前提を覆してはいけません。
この事実を覆すとなると、800~1000字程度の小論文では手に負えなくなるので、気をつけましょう。
社会的に受け入れられない暴論・極論を書くこと
「国の税金制度を廃止するべき」「隣国○○との国交を断絶するべき」など、よほどの代替案や理由がないにもかかわらず、社会的に受け入れられない暴論・極論は控えましょう。
小論文で問われることは「○○さえ行えば解決する」などの単純な答えでは解決できない問題ばかりであり、よほどの代替案や根拠がない限り、暴論・極論を書かない方が無難です。
小論文で大切なことは、自分の意見とその根拠(理由)だということをしっかり頭に入れておきましょう。
差別的・攻撃的表現などの感情表現
「〇〇を懲らしめるべき」「〇〇を排除せよ」といった言葉を聞いて、よく思う人はほとんどいません。
とくに第三者の人からすれば「何だか気持ち悪い」と思って当然です。
また「〇〇に対して許せないと思った」など、自分の感情を書くことも控えましょう。
採点者の人も、第三者の立場で見るので、差別的・攻撃的表現や自分の感情を小論文の答案で見ると、その文章に対する心証(印象)が悪くなってしまいます。
もちろん、個人的な感情で答案を採点することはありませんが、心証が悪くなるような文章は無意識的にも減点したくなる文章となりますので、気をつけてください。
「自分の意見」と「その理由」からくる論理性と、さらに読む人への「感情的な配慮」ができる文章が良い小論文の基本であり、ぜひ受験生の皆さんもそのことを踏まえて小論文の書く練習をしていきましょう。
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