大学生の「読書感想文の書き方」で、お悩みではありませんか?
「どう書けばいいか全然分からない」「高校とは違うって言われても何が違うの?」こんな不安を抱えている人も多いでしょう。
でも、大学生の読書感想文は、正しい構成とコツを掴めば決して難しいものではありません。
また評価される読書感想文には明確なパターンがあり、「なぜ」を3回繰り返す深掘り手法を使えば、誰でも説得力のある内容を書くことができます。
単なる感想の羅列ではなく、論理的思考力が求められる大学レベルの読書感想文について、具体例とテンプレートをもとに詳しく解説していきます。
今回学ぶこと
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大学生の読書感想文の書き方
大学生の読書感想文は、自分なりの視点で本の内容を深く分析し、論理的に構成することが重要です。ここでは効果的な書き方のポイントを段階的に解説していきます。
図書が自由な場合は、自分が興味のある本を選ぶ
読書感想文で図書が指定されていない場合、最も重要なのは、あなた自身が心から読みたいと思える本を選ぶことです。
興味のある分野や関心のあるテーマの本を選ぶことで、自然と深い感想や独自の視点が生まれやすくなります。
例えば、将来の職業に関連する専門書、社会問題を扱った新書、人生観に影響を与えそうな小説など、あなたの現在の状況や将来の目標に関連する本がおすすめです。
無理に有名な古典や難解な哲学書を選ぶ必要はありません。
むしろ、読んでいて楽しく、「この考え方は面白い」「この部分について詳しく書きたい」と思える本を選びましょう。
本選びで迷った場合は、書店で実際に手に取って数ページ読んでみることが大切です。
文体が自分に合っているか、内容に興味が持てるかを確認できます。
あなたが本当に興味を持てる一冊を見つけることが、優れた読書感想文を書く第一歩となります。
書く構成は、「序論」・「本論」・「結論」
大学生の読書感想文では、論文のような明確な構成を意識することが重要です。
序論・本論・結論の三部構成で書くことで、読み手にとって理解しやすく、説得力のある文章になります。
序論では、選んだ本の基本情報と読書感想文のテーマを明確に示します。「なぜこの本を選んだのか」「この本から何を学びたかったのか」を簡潔に述べましょう。
本論は感想文の核となる部分で、本の内容に対するあなたの分析や考察を展開します。単なる感想ではなく、具体的な根拠を示しながら論理的に述べることが大切です。
結論では、読書を通じて得られた学びや気づき、今後の行動や考え方の変化について述べます。序論で提示したテーマに対する答えを示し、全体をまとめる役割を果たします。
序論
- 選んだ本の基本情報を提示する
- 読書感想文のテーマを明確に示す
- 本を選んだ理由を簡潔に述べる
- 本から学びたかったことを明記する
本論
- 感想文の核となる重要な部分
- 本の内容に対する分析や考察を展開する
- 単なる感想ではなく論理的な記述を心がける
- 具体的な根拠を示しながら述べる
結論
- 読書を通じて得られた学びや気づきを述べる
- 今後の行動や考え方の変化について言及する
- 序論で提示したテーマに対する答えを示す
- 全体をまとめる役割を果たす
この構成を意識することで、散漫になりがちな感想文を論理的で説得力のある文章に仕上げることができるでしょう。
本を読みながら感想をメモする
効果的な読書感想文を書くためには、読書中のメモ取りが欠かせません。気になった箇所や印象深い表現があったら、その場でメモを取る習慣をつけましょう。
ページ数も一緒に記録しておくことで、後で引用や参照する際に非常に便利です。
メモの内容は多岐にわたります。心を動かされた文章、疑問に思った点、著者の主張に対する賛成・反対の意見、自分の体験と重なる部分などを書き留めておきましょう。
また、「なぜそう思ったのか?」という理由も一緒にメモしておくと、後で感想文を書く際の貴重な材料になります。
読み終わった後にまとめてメモを取ろうとしても、読んでいる最中の生の感情や気づきは失われてしまいます。
付箋を使って重要な箇所にマークを付けたり、余白に直接書き込んだりする方法も効果的です。
人間の記憶は忘れやすいですので、その時の気持ちや気づきはすぐにメモしておくと後で書きやすくなりますよ。
心動かされたこと「なぜ」と自分に問いかける
読書感想文の質を大きく左右するのは、表面的な感想を深く掘り下げる作業です。
心を動かされた場面や印象に残った内容について、「なぜそう感じたのか」「なぜその部分が重要なのか」と繰り返し自分に問いかけることが重要です。
一つの問いを設定したら、「なぜ」を3回以上繰り返してみましょう。
例えば「この登場人物の行動に感動した」→「なぜ感動したのか?勇気ある行動だったから」→「なぜ勇気ある行動に感動するのか?自分にはできないと思うから」→「なぜ自分にはできないと思うのか?失敗を恐れているから」というように、深層にある感情や価値観を探っていきます。
さらに、「もし現実的な範囲で、書かれていることと別の場合はどうなるのか?」と仮定を変えて考えてみることも効果的です。
これにより、著者の主張や物語の設定がいかに巧妙に構築されているかが見えてきます。
このような深い分析を通じて、あなた独自の洞察と説得力のある論考を展開できるようになるでしょう。
大学生の読書感想文の構成【4ステップ】
大学生の読書感想文では、単なる感想の羅列ではなく、論理的な構成と深い考察が求められます。
以下の4つのステップを踏むことで、読み手に伝わりやすく、説得力のある感想文を書くことができるでしょう。
【ステップ1】一番書きたいことと結論を決める
読書感想文を書く前に、最も印象に残った点や伝えたいメッセージを明確にすることが重要です。この作業により、文章全体の方向性が定まり、読み手にとって分かりやすい構成となります。
まず、読書中に心に響いた場面や考えさせられた内容を書き出してみましょう。その中から「これだけは伝えたい」という核となるテーマを一つ選びます。
たとえば「主人公の成長過程から学んだ挫折の意味」や「作品が描く社会問題への新たな視点」などが挙げられるでしょう。
小論文の考え方ですが、以下の記事も参考にしてみましょう。

次に、そのテーマに対する自分なりの結論を設定します。
結論は感想文の着地点となるため、読書を通じて得た気づきや学び、価値観の変化を具体的に言語化することが大切です。
この段階で結論が曖昧だと、文章全体がぼやけてしまうため、明確で具体的な表現を心がけましょう。
【ステップ2】 構成の4パターン
読書感想文には効果的な構成パターンがあり、自分の書きたい内容に最も適したものを選ぶことで、説得力のある文章を作ることができます。
(1)感想 → 展開パターン
作品に対する率直な感想から始めて、それを自分の体験や社会問題へと発展させる。
例:「主人公の決断力に深く感動した → 私自身も将来への迷いを断ち切り、明確な目標に向かって行動したい」のような流れ。
(2)問い → 答えパターン
作品を読んで生まれた疑問から始まり、考察を重ねて自分なりの答えにたどり着く構成。
例:「なぜ人はコミュニケーションで悩むのだろうか → 相手を理解しようとする姿勢の不足が根本的な原因かもしれない」といった展開。
(3)読む前 → 読んだ後パターン
読書前後の価値観や考え方の変化を軸に構成する。
例:「以前は競争こそが成長の源だと思っていた → しかし協力の力を描いたこの作品を読んで、助け合うことの価値を再認識した」のような対比が効果的。
(4)例え → 主張パターン
一見関係のない身近な話題から入り、作品のテーマに巧みに繋げる手法。
例:「スマートフォンの普及で人々の生活が激変したように → この小説が描く技術革新も人間関係に深刻な影響を与えている」という具合に展開。
【ステップ3】書き出しと結論の間を、箇条書きで埋める
構成パターンが決まったら、書き出しから結論までの道筋を箇条書きで整理することが次の重要なステップです。この作業により、論理的な流れを確保し、書きながら迷子になることを防げます。
まず、選んだ構成パターンに沿って大まかな流れを3〜4つの要素に分けてみましょう。
「導入(一番言いたいこと)」「作品の内容紹介」「自分の考察・分析」「結論(答えの提示)」のような段階に分けられます。
上記をテンプレートにして、それぞれ1~2文で書いてみましょう。
【感想文テンプレート】
導入(一番言いたいこと):
作品の内容紹介:
自分の考察:
結論(考察から言えること):
例:『君の膵臓をたべたい』から見えたこと
導入(一番言いたいこと):この小説を読んで最も印象に残ったのは、主人公の孤独感と現代社会における人間関係の希薄さが重なって見えたこと。
作品の内容紹介:桜良は自分の病気を隠しながら明るく振る舞い続ける。この姿は、SNSで常に楽しそうな投稿を続ける現代の若者と重なる部分がある。
自分の考察1:
実際の感情や悩みを表に出すことなく、理想的な自分を演じ続ける現象は、現代社会の特徴的な問題。学校や職場においても、効率性が重視される結果、深い人間関係を築く時間的余裕が失われがち。
考察2:
表面的なつながりではなく、相手の内面に関心を持ち、真剣に向き合う姿勢こそが、真の人間関係を構築する鍵。
考察3:
現代社会における孤独感の解決には、個人の意識変化だけでなく、社会システムの見直しも必要。
結論:限られた時間の中でも、他者と真摯に向き合うことで人生は豊かになる。
次に、各段階で具体的に何を書くかを箇条書きで列挙します。「主人公の行動で印象的だった場面」「その場面から読み取れる作者のメッセージ」「自分の体験との共通点」「今後の行動への影響」など、詳細な内容を整理しましょう。
主人公の行動で印象的だった場面:
その場面から読み取れるメッセージ:
本が書かれた社会的背景:
自分の体験との共通点:
今後の行動への影響:
上記はテンプレートに合わせて選択してください。無理にすべてを入れる必要はありません。
そして、この段階では完璧な文章にする必要はありません。
キーワードや短い文でも構わないので、思いついたことをどんどん書き出すことが大切です。後で肉付けする際の土台となる骨組みを作ることが目的です。
【ステップ4】 箇条書きを肉付けしていく
箇条書きで整理した内容を、具体的で説得力のある文章に発展させる段階です。
ここでは「なぜそう思うのか」「具体的にはどういうことか」といった問いを自分に投げかけながら内容を深めていきます。
各箇条書きの項目に対して「例えば」「つまり」「それはどういうことなのか」「なぜなら」といった接続詞や疑問詞を使って展開してみましょう。
単に「感動した」と書くのではなく、「なぜ感動したのか?」「どの部分に心を動かされたのか?」「それは自分のどんな体験と重なるのか?」と掘り下げます。
また、作品の内容と自分の考えを関連付ける際は、根拠を明確にすることが重要です。
「主人公の選択は正しかったと思う」だけでなく、「なぜならその選択により周囲の人々が救われ、さらに主人公自身も成長できたからだ」のように理由を示しましょう。
読み手が納得できるよう、抽象的な表現は具体例で補強し、個人的な感想は客観的な分析と組み合わせることで、深みのある感想文に仕上げることができます。
この作業が文章に深みを出し、読み手に印象に残る高評価を与えたくなる内容に仕上げます。特にここは手を抜かずに進めましょう。
大学生の感想文の書き方4例
大学生の感想文では、単なる内容要約ではなく、批判的思考力と論理的構成力が求められます。
ここでは、異なるアプローチで書かれた4つの例文を通して、効果的な感想文の書き方を学んでいきましょう。
例文1:社会問題への発展型(感想 → 展開パターン)
題名:『君の膵臓をたべたい』から考える現代社会の孤独感
(感想)
この小説を読んで最も印象に残ったのは、主人公の孤独感と現代社会における人間関係の希薄さが重なって見えたことである。病気を患う桜良と内向的な主人公の関係性は、表面的なコミュニケーションに留まりがちな現代人の姿を映し出している。
(展開)
物語の中で、桜良は自分の病気を隠しながら明るく振る舞い続ける。この姿は、SNSで常に楽しそうな投稿を続ける現代の若者と重なる部分がある。実際の感情や悩みを表に出すことなく、理想的な自分を演じ続ける現象は、現代社会の特徴的な問題といえるだろう。一方で主人公は、他者との深い関わりを避けて生きてきた。これもまた、面倒な人間関係を避けて個人主義に走る現代人の典型的な姿である。
このような状況は、現代社会の構造的な問題と無関係ではない。核家族化の進行により、家庭内でのコミュニケーション機会が減少している。さらに地域コミュニティの結束も弱くなり、近所づきあいも希薄化している。学校や職場においても、効率性が重視される結果、深い人間関係を築く時間的余裕が失われがちだ。
私自身も大学生活において、このような現象を実感することがある。授業後にすぐ帰宅する学生が多く、クラスメイトとの交流は最小限に留まることが珍しくない。アルバイト先でも、業務に必要な会話以外はほとんど行わない。便利なコミュニケーションツールが普及した現代だからこそ、かえって深いつながりを築くことが困難になっているのかもしれない。
しかし物語の終盤で描かれる主人公の変化は、希望を感じさせる。桜良との出会いを通じて、他者と真摯に向き合うことの大切さを学んだ主人公は、積極的に人間関係を築こうとする。この変化は、現代社会の孤独感を解決する一つのヒントを示している。表面的なつながりではなく、相手の内面に関心を持ち、真剣に向き合う姿勢こそが、真の人間関係を構築する鍵となる。
現代社会における孤独感の解決には、個人の意識変化だけでなく、社会システムの見直しも必要だろう。職場や学校において、人間関係を深める時間と場所を意図的に設ける工夫が求められる。また、効率性だけを追求するのではなく、人間らしい温かさを大切にする価値観の転換も不可欠である。
(結論)
この作品から学んだ最も重要なことは、限られた時間の中でも、他者と真摯に向き合うことで人生は豊かになるということだ。現代社会の孤独感という課題に対して、私たち一人ひとりができることから始めていく必要がある。(1007字)
解説:個人的な読書体験を現代社会の課題に発展させる手法
- 個人的な読書体験から始まる
- 「最も印象に残ったのは、主人公の孤独感と現代社会における人間関係の希薄さが重なって見えたこと」
- 作品の具体的な場面や登場人物の行動を通じた個人的な気づき
- 作品分析を通じて社会問題を浮き彫りにする
- 桜良の「明るく振る舞う姿」→「SNSで理想的な自分を演じる現代の若者」
- 主人公の「他者との関わりを避ける姿勢」→「個人主義に走る現代人」
- 社会構造の分析へと発展
- 核家族化、地域コミュニティの希薄化、効率性重視の社会システム
- 個人の体験から社会全体の構造的問題へのスケールアップ
例文2:比較分析型(問い → 答えパターン)
題名:『罪と罰』と現代の正義観の比較考察
(前置き)
ドストエフスキーの『罪と罰』を読み返すたびに、主人公ラスコーリニコフの犯罪に対する理論と現代社会の正義観との相違点に注目せずにはいられない。この作品が提起する道徳的問題は、現代においてより複雑な様相を呈している。
ラスコーリニコフは「非凡人理論」に基づいて老婆殺しを正当化しようとする。社会に貢献する優秀な人間であれば、害悪をもたらす人間を排除することが許されるという論理である。この考え方は、19世紀ロシアの社会情勢と密接に関連している。農奴制が残る格差社会において、既存の道徳的秩序への反抗として生まれた思想といえる。
(問い)
現代社会では、このような極端な理論は表面的には否定される。しかし形を変えた類似の思考は、様々な場面で見つけることができる。例えば能力主義社会において、優秀な人材により多くの権利や特権が与えられる現象は、ラスコーリニコフの理論と根本的に異なるだろうか。また社会保障制度の議論において、社会の負担となる存在への冷淡な視線も、似たような価値判断に基づいている。
特に注目すべきは、現代のSNS社会における「正義」の行使方法である。インターネット上では、道徳的に問題があると判断された個人や団体に対して、集団的な制裁が加えられることがある。この現象は、ラスコーリニコフのように個人が正義を執行するのではなく、群衆が正義の担い手となる点で異なる。しかし「自分たちの正義観に基づいて他者を裁く」という本質的な構造は共通している。
作品の中でラスコーリニコフは、自分の理論の破綻に直面する。殺人を犯したものの、期待していた解放感や優越感は得られず、かえって苦悩に支配される。この描写は、自分勝手な正義感の限界を示している。現代社会でも、一方的な正義の執行が新たな問題を生み出すケースが頻繁に見られる。炎上による過度なバッシングが、対象者だけでなく社会全体に悪影響を与える現象がその典型例だ。
一方で、作品の後半で描かれるソーニャとの関係は、異なる正義観を提示している。ソーニャは売春という社会的に非難される職業に就きながらも、家族への愛と宗教的信念を貫く。彼女の生き方は、社会的な成功や合理性ではなく、愛と献身に基づく価値観を表している。この対比は、現代社会においても重要な示唆を与える。
(答え)
現代の多様性社会では、単一の正義観や価値観で全てを判断することの危険性がより明確になっている。異なる文化的背景や個人的事情を持つ人々が共存する社会において、ラスコーリニコフのような絶対的な理論は機能しない。むしろソーニャが示すような、他者への理解と共感に基づく姿勢が求められる。
(結論)
この作品が現代に与える最も重要な教訓は、正義の相対性と人間の複雑さを認識することの大切さである。簡単な善悪の判断ではなく、状況の複雑さを理解し、多角的な視点から物事を捉える姿勢が、現代社会における真の価値判断の基盤となるはずだ。(1194字)
解説:古典作品と現代社会の価値観を比較分析する手法
- 問題提起:古典と現代の連続性を示唆
- 「ラスコーリニコフの犯罪理論と現代社会の正義観との相違点」
- 19世紀の作品が現代にも通じる普遍的問題を扱っていることを暗示
- 古典作品の分析:歴史的文脈での理解
- 「非凡人理論」の解説
- 19世紀ロシアの社会情勢(農奴制、格差社会)との関連付け
- 現代社会への転換:類似現象の発見
- 能力主義社会における特権
- 社会保障制度への冷淡な視線
- 橋渡しの論理:「形を変えた類似の思考」という表現で自然に接続
例文3:体験統合型(読む前 → 読んだ後パターン)
題名:『アルジャーノンに花束を』から学んだ知性と幸福の関係
(読む前=一般論としても知性の向上が幸福につながるとの考え)
チャーリイの知能が向上していく過程で感じた孤独感は、私自身の大学受験期の体験と重なる部分があった。この小説を読んで改めて考えさせられたのは、知性の向上が必ずしも幸福に直結しないという現実である。
物語の前半で描かれるチャーリイは、知的障害があるものの周囲の人々との関係は良好だった。パン屋の同僚たちは彼をからかうこともあったが、基本的には受け入れられていた。しかし手術によって知能が向上すると、周囲との関係性が徐々に悪化していく。高い知性を得たチャーリイは、以前は気づかなかった人々の悪意や偏見を認識するようになり、結果として深い孤独感に苛まれる。
この展開は、私が受験勉強に没頭していた時期の経験を思い起こさせる。学力が向上するにつれて、以前は楽しめていた友人との他愛のない会話に物足りなさを感じるようになった。勉強以外の話題に関心を持てなくなり、次第に友人関係が希薄になっていった。知識を得ることで見える世界が広がった一方で、同世代との共通点が減少し、疎外感を味わった経験がある。
チャーリイの場合、知性の向上とともに感情面でも複雑な変化が現れる。特にアリスとの恋愛関係において、過去の自分への嫌悪感や現在の自分への不安が交錯し、健全な関係を築くことができない。この描写は、知性と感情のバランスの重要性を示している。高い知性を持ちながらも感情的な成熟が伴わない状態では、真の満足感や幸福感を得ることは困難である。
大学に入学後、多様な価値観を持つ人々と出会う中で、私は知性の多面性を理解するようになった。学業成績が優秀でも人間関係に悩む学生もいれば、勉強は苦手でも高いコミュニケーション能力で周囲を魅了する学生もいる。知性を単一の指標で測ることの限界を実感した。
物語の終盤で知能が元に戻っていくチャーリイの姿は、知性と人間らしさの関係について深く考えさせられる。知能が低下する過程で、彼は再び素直で純粋な心を取り戻していく。この変化は悲劇的に描かれているが、同時に人間の本質的な価値について重要な問題提起をしている。
(読んだ後)
現代社会では知性や学歴が過度に重視される傾向がある。しかしこの作品は、真の幸福には知性以外の要素も重要であることを教えてくれる。他者への思いやり、純粋な心、そして周囲との調和。これらの要素と知性がバランス良く組み合わさった時に、初めて豊かな人生を送ることができるのではないだろうか。
(結論)
チャーリイの体験から学んだのは、知性の向上を目指しながらも、人間としての基本的な温かさを失わないことの大切さである。真の知性とは、自分だけでなく周囲の人々の幸福も考慮できる包括的な能力であり、それこそが人生を豊かにする鍵となる。(1111字)
解説:個人的な体験と作品の内容を関連付けて論じる手法
共感を呼ぶ導入
・読者の多くが経験する「受験期の人間関係の変化」から始まる
・作品への親近感と関心を同時に喚起
体験と作品の相互照射
・個人体験が作品理解を深め、作品が体験の意味を明確化
・単なる体験談にも作品紹介にもならない、両者の融合
段階的な深化構造
・受験期 → 大学入学後 → 現代社会という時系列的な成長
・作品理解も表面的分析→深層的洞察へと発展
例文4:課題解決の提案型(例え → 主張パターン)
題名:『1984年』から考える現代の情報統制への対策
(例え)
「1999年の7の月に人類が滅亡する」とした『ノストラダムスの大予言』みたく、かつての笑い話のような空想が現実になるとしたら?
(主張)
オーウェルの『1984年』が描く全体主義社会の恐怖は、現代のデジタル社会においてより現実味を帯びている。この作品を読んで痛感したのは、情報統制の脅威に対する具体的な対策を考える必要性である。
作品中のビッグ・ブラザー体制では、テレスクリーンによる監視、歴史の改竄、言語の単純化などを通じて市民の思考をコントロールしている。これらの手法は、現代のデジタル技術を考えると決して荒唐無稽な話ではない。SNSでの発言監視、検索履歴の収集、AIによる世論操作など、作品で描かれた統制手法の現代版が既に存在している。
特に注目すべきは「二重思考」という概念である。矛盾する二つの信念を同時に持ち、必要に応じて使い分ける思考法として描かれている。現代社会でも、フィルターバブル効果により、個人が接する情報が偏向し、矛盾する情報源から異なる「真実」を受け取る現象が起きている。この状況は、意図的ではないにせよ、二重思考に似た状態を生み出している。
このような情報統制の脅威に対して、個人レベルでできる対策を考えてみたい。まず重要なのは、情報源の多様化である。単一のメディアや情報源に依存せず、異なる立場からの情報を積極的に収集する習慣を身につける必要がある。私自身も意識的に異なる政治的立場のメディアを読み比べるようにしている。
次に、批判的思考力の向上が不可欠である。受け取った情報をそのまま鵜呑みにするのではなく、情報源の信頼性、論理的整合性、事実との照合などを行う習慣を身につけるべきだ。大学のメディアリテラシー教育では、このような技能を体系的に学ぶ機会があるが、より広く社会全体に普及させる必要がある。
技術的な対策も重要である。プライバシー保護ツールの活用、匿名通信技術の習得、データの暗号化など、個人情報を保護する技術的知識を身につけることで、監視からある程度身を守ることができる。これらは専門的な知識を要するため、教育機関での普及が急務である。
社会システムレベルでの対策も考慮すべきである。情報の透明性を確保する法制度の整備、メディアの独立性保護、デジタルプラットフォームの規制などが必要だ。また、ジャーナリズムの質を維持するための支援体制も重要である。市民一人ひとりが、これらの政策について関心を持ち、政治参加を通じて実現を図ることが求められる。
教育面では、幼少期からのメディアリテラシー教育の充実が不可欠である。情報の真偽を見極める能力、多角的な思考力、批判的分析力などを段階的に身につけさせる教育カリキュラムの開発が必要だ。また、大人に対しても継続的な学習機会を提供する社会的仕組みが求められる。
(結論)
『1984年』の警告を現実のものとしないためには、個人の意識改革と社会システムの改善を両輪として進める必要がある。一朝一夕に解決できる問題ではないが、一人ひとりができることから始めて、情報の自由と思考の独立を守り抜いていかなければならない。(1266字)
解説:作品の警告を現代社会の課題解決につなげる手法
危機意識の提示:作品の現代的意義
・「全体主義社会の恐怖は、現代のデジタル社会においてより現実味を帯びている」
・フィクションの警告が現実の脅威であることを強調
作品分析と現代社会の対応関係
・ビッグ・ブラザー体制の統制手法
・現代のデジタル監視技術との具体的な対応
・架橋の論理:「決して荒唐無稽な話ではない」で作品と現実を接続
核心概念の現代的解釈
・「二重思考」→フィルターバブル効果
・作品の抽象的概念を現代の具体的現象として再解釈
以上、4例文について見てきました。
あくまで模範例文なので、参考にしつつ実際には満点を目指さずに気を楽に持って書いてみましょう。
読書感想文を書く注意点
読書感想文は単なる課題ではなく、自分自身と向き合う貴重な機会です。
効果的な書き方のポイントを押さえることで、より深い学びと成長につなげることができます。
読書感想文を書く3つのメリット
読書感想文は、ただ書いたらそれで終わりではなく、以下の3つメリットがあります。
① 自己啓発になる
読書感想文を書く最大の価値は、自分自身の内面と深く向き合えることにあります。どのような言葉や場面に心を動かされるかを知ることで、自分の価値観や感性を発見できるでしょう。
② 語彙力が向上する
感情を言葉で表現する過程で語彙力が自然に向上し、表現力も豊かになります。これは他のレポート作成やいずれ書くことになる論文の作成にも役立ちます。
③ 試験対策になる
いずれ行われる就職活動においても、この経験は自己分析や志望動機を考えること、面接での自己表現に大いに役立ちます。読書を通じて得た気づきや影響を具体的に語れることは、あなたの本気度と深い思考力を示す重要な材料となります。
あえてデメリットを挙げれば、書く時間と労力くらいでしょうか。
でも、こんなに書くことにメリットがあるのなら、きちんと書いた方が得ですよね。
読書感想文を書くとは、自分を知ること
読書感想文の本質は、本の紹介文を書くことではありません。
それは自分自身について深く探求し、言葉にする作業なのです。
本を読んで感じることは、その本だけが原因ではなく、あなたの価値観や経験、その時の気持ちによって大きく左右されます。
同じ本でも、読む時期や置かれた状況によって全く違う感想を抱くことがあるでしょう。これは、あなた自身が常に変化し続けているからです。
読書感想文を書くということは、本をきっかけにして自分の内面を見つめ直し、自分がどのような人間なのかを発見する貴重な機会となります。
題名は、パッと見で分かるものにする
題名は、ただ「○○について」だと何が言いたいのか分からず、教授も読んでみたいという意欲がそがれてしまいますが、別に売るための文章でもないのでキャッチーなタイトルにする必要もありません。
大学での読書感想文の題名は、本を読んで「見えたこと」や、自分がこの文章で「何をどういうかたちで言いたいのか?」ということを一言でまとめてみましょう。
例えば、先ほどの「例文1」では、『君の膵臓をたべたい』を読んで現代社会の孤独感というのが見えてきたので、『君の膵臓をたべたい』から考える現代社会の孤独感と一言でまとめています。
同じく「例文2」であれば、『罪と罰』を読んでこの本が書かれた当時の正義観と、現代の正義観を比較して考えているので、『罪と罰』と現代の正義観の比較考察と一言でまとめています。
上のそれぞれ題名で、何について書かれているのかということが一言で分かりますね。
題名は、読み手が感想文を読む前に一言でパッと見て何について書かれているか分かるものにしましょう。
あらすじは必須ではないが、本の内容は適切に入れる
読書感想文において、詳細なあらすじを書く必要はありません。
感想文の目的は本の内容紹介ではなく、読者であるあなたがどのような思いを抱いたかを伝えることだからです。
特に課題図書として指定されている場合は、読み手がその本の内容を既に知っているケースが多いため、長々とした説明は不要といえるでしょう。
ただし、自分の感想や考察を裏付けるために、本の内容への言及は欠かせません。
印象に残った場面や登場人物の行動、重要な出来事について触れることで、読み手があなたの視点を理解しやすくなります。
あらすじを書く場合も、「誰が何をしたか」という基本的な要素を簡潔にまとめる程度に留めることが大切です。本の紹介文ではなく、あくまで感想を述べるための土台として活用しましょう。
筆者の気持ちを考えてみる
作品を読む際は、筆者が何を伝えたいのかを想像することが大切ですが、完璧な理解を求める必要はありません。
一つのセリフや場面、さらには表紙のデザインに心を動かされたなら、それだけでも立派な感想文の出発点になります。
「この言葉が今の自分に必要だった」「主人公の行動に驚いた」といった素直な反応こそが、あなただけの感想文を生み出す原動力となるでしょう。
そして自分が「主人公や登場人物なら、どう考えるのか?」ということも考えてみると、本の内容や作者の意図もより理解できるようになります。
そして読み進めながら気になった箇所に付箋を貼ったり、感じたことをメモしたりすることで、後の執筆作業がスムーズになります。
過去に読んだ本と比較してみる
これまでに読んだ本と今回の作品を比較することで、感想文に深みと独自性を加えることができます。似たテーマを扱った作品との違いや、同じ作者の他の作品との共通点を見つけてみてください。
また、以前は理解できなかった内容が今回は理解できた、昔は好きだった表現に違和感を覚えるようになったなど、自分の成長や変化を実感する機会にもなります。
このような比較を通じて、あなたの読書体験の幅広さと思考の変遷を示すことができるでしょう。
正解を求めない、また意外性は意識しない
読書感想文に唯一の正解は存在しません。他の人と同じ結論に達したとしても、そこに至るまでの思考過程はあなただけのものです。
むしろ、その考える過程こそが感想文の真の価値であり、独自性の源泉となります。
もし将来作家を目指しているのであれば、意外性のある文章や売れる文章を書いていくべきかもしれませんが、そうでなければ「なぜ」から思ったことを率直に書いてみましょう。
意外性のある結論を無理に作り出そうとするよりも、自分が本当に感じたことや考えたことを素直に表現することが重要です。
ありふれた感想に思えても、それがあなたの心から生まれた言葉であれば、必ず読み手に伝わる力を持っています。自分の感性を信じて、等身大の思いを綴ってください。
それに意外性のある文章や人と違うことを書こうとするあまり、自分にウソをつくより率直な思いや考えを書く方が楽しいですよ。
提出前に添削を受けることがオススメ
完成した感想文は、提出前に第三者の目でチェックしてもらうことを強く推奨します。
読んでもらい、内容が伝わりやすいか、誤字脱字はないか、論理的な流れになっているかを確認してもらいましょう。
担当の教授以外で信頼できる大人に見てもらいます。
そこで自分では気づかない表現の曖昧さや、読み手にとって分かりにくい部分を指摘してもらえます。
また、他の人の意見を聞くことで、新たな視点に気づいたり、自分の考えをより明確にしたりすることもできるでしょう。
知っている人に見せるのは気が引ける場合は、AIや添削サービスといったものを活用してもよいかもしれません。
客観的なフィードバックを受けることで、より完成度の高い感想文に仕上げることができます。
大学での読書感想文を書く行為を通じて、率直な自分の思いや考えを客観的に見つめ直してみましょう。
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