小論文の書き始めで悩んでいませんか?
問題提起は小論文の成否を左右する重要な要素です。
本記事では、「小論文の問題提起とは何か」「小論文の問題提起の仕方」「問題提起の書き出し例」について詳しく解説します。
適切な問題提起の方法と具体例を知れば、あなたの小論文は必ず書きやすくなります。
効果的な問題提起の書き方を一緒に学んでいきましょう。
- 小論文の問題提起とは何か?
- 問題提起の仕方
- 問題提起の書き出し例
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小論文の問題提起とは何か
問題提起とは、出題されたテーマや課題に対して問いを投げかけることです。
小論文の序論部分で行われることが多く、これから展開する論の方向性を決める重要な役割を担っています。
適切な問題提起ができれば、読み手に「この文章は何について書かれているのか」を明確に伝えることができ、スムーズな読解につながります。
問題に対する問いや投げかけ
問題提起の本質は、テーマに関する「問い」を示すことにあります。これにより読み手と問題意識を共有し、これから展開する論の方向性を明確にします。
問題提起は単なる導入ではなく、文章全体の骨格となる重要な要素です。
よい問題提起は、テーマに対する自分の立場を明確にします。
例えば、「少子高齢化は日本の将来にどのような影響をもたらすだろうか」といった形で問いかけを行うことで、読み手は文章の方向性を理解しやすくなります。
また、問いだけでなく、それに対する自分の見解も簡潔に示すと、より説得力のある書き出しになるでしょう。
問題提起と結論をセットで提示することで、読み手は論の全体像を把握しやすくなります。
「〇〇だろうか」が基本
問題提起の典型的な形式は「〇〇だろうか」という疑問形です。
問題提起の基本形(だろうか・た・し・な・よ)
○○だろうか(問題提起)
たしかに〇〇であるかもしれない(予想される反論)
しかし、私は○○だと考える(反論を踏まえた自分の意見)
なぜなら○○だからである(意見の理由)
よって○○である(結論)
この形式を用いることで、読み手に考えるきっかけを与えることができます。例えば「インターネットの普及は教育にどのような変化をもたらすだろうか」といった問いかけが挙げられます。
この疑問形は、テーマに対する興味関心を引き出し、読み手を自然と論の展開に引き込む効果があります。
さらに、「〜ではないだろうか」といった形で自分の見解を示唆することも可能です。
ただし、単純な疑問文にするだけでなく、問題の本質や背景も簡潔に触れることで、より深みのある問題提起になります。
問題提起は文章の入口であると同時に、論理展開の方向性を決定づける重要な役割を担っているのです。
必ずしも問題提起をするわけではない
すべての小論文で問題提起が必要というわけではありません。
出題形式や問われている内容によっては、直接的な問題提起を行わず、テーマに関する現状分析や背景説明から始める方が適切な場合もあります。
例えば、意見を述べる形式の問題では「〜について自分の考えを800字で述べなさい」というように、すでに問いが明確になっているケースがあります。
このような場合は、改めて問題提起をするよりも、直接自分の立場や主張を明確にした方が効果的です。
また、資料読み取り型の問題では、資料から読み取れる事実を整理して述べることから始めることも多いでしょう。
問題提起すべきかどうかは、出題の意図を正確に理解し、最も効果的な書き出しを選ぶことが重要です。
問題に合わせて問題提起を「する・しない」を決める
小論文の出題形式は多様であり、それぞれに適した書き出しがあります。
問題提起をするかしないかは、出題の形式や条件に応じて柔軟に判断する必要があります。
テーマ型の小論文では、自ら問題意識を持って論を構築する必要があるため、明確な問題提起が効果的です。
例えば「情報社会と個人のプライバシー」というテーマであれば、「デジタル時代において個人のプライバシーをどう守るべきか」という問題提起が考えられます。
一方、課題文型では文章中の筆者の主張に対する自分の意見を述べる場合が多く、筆者の問題提起に対応する形で自分の立場を示すことになります。
資料読み取り型では、データから読み取れる傾向や特徴を指摘することから始め、そこから浮かび上がる問題点を指摘するという流れが自然です。
重要なのは、出題意図に沿った書き出しを選択し、読み手にとって分かりやすい導入部を作ることです。どのような形であれ、序論では「これから何について論じるのか」を明確にすることが大切です。
小論文の問題提起の仕方
問題提起の基本を理解したところで、実際にどのように効果的な問題提起を行えばよいのか、具体的な方法と実例を見ていきましょう。
良い問題提起は読み手の関心を引きつけるだけでなく、文章全体の流れをスムーズにします。
問題提起の具体例や効果的な書き方のコツを学び、実践力を高めていきましょう。
良い問題提起の仕方
効果的な問題提起には、いくつかの重要なポイントがあります。
まず、テーマに対する自分の立場や視点を明確にすることが大切です。「賛成か反対か」「どのような視点で論じるのか」を明らかにすることで、読み手に論の方向性が伝わりやすくなります。
例えば、「現代社会におけるSNSの影響」というテーマであれば、「現代社会においてSNSは若者のコミュニケーション能力に悪影響を与えているのではないだろうか」というように、具体的な切り口を示すことが効果的です。
この問題提起では、SNSと若者のコミュニケーション能力という関係性に焦点を当て、否定的な視点から論じる方向性が示されています。
また、問題提起と結論をセットで示すことも有効です。「〇〇は△△であると考える。なぜなら…」というように、最初に自分の立場を示してから論を展開することで、読み手は論の全体像を把握しやすくなります。
ただし、結論から始めることが難しい場合は、純粋な問いかけや問題の背景などを提示する形で問題提起をしても構いません。
例題と問題提起例
実際の入試問題を例に、具体的な問題提起の例を見てみましょう。異なるタイプの問題に対して、どのように問題提起をすればよいのかを理解することで、応用力が身につきます。
例えば「少子高齢化社会における労働力確保について論じなさい」という問題の場合、次のような問題提起が考えられます。
「少子高齢化が進む日本社会において、人手不足が顕在化し生産性や企業の存続そのものに影響を及ぼす中で、私は高齢者や女性の労働参加を促進する政策強化が必要だと考える」。このように、問題の背景や影響を簡潔に述べたうえで、自分の立場を明示しています。
また、「情報技術の発達と個人のプライバシーについて自由に論じなさい」という問題では、「情報技術の急速な発達により、私たちの個人情報は常に漏洩のリスクにさらされている中、便利さと引き換えにどこまでプライバシーを犠牲にすべきなのだろうか。私は、利便性よりも個人の権利保護を優先すべきだと考える」という問題提起が可能です。
これらの例からわかるように、良い問題提起は課題の本質を捉え、読み手に論点を明確に伝えるものです。
また、問題提起の仕方によって、その後の論の展開方向も決まってくるため、慎重に考える必要があります。
例題 | 問題提起の例 | 問題提起の特徴 |
---|---|---|
少子高齢化社会における労働力確保について論じなさい | 「少子高齢化が進む日本社会において、人手不足が顕在化し生産性や企業の存続そのものに影響を及ぼす中で、私は高齢者や女性の労働参加を促進する政策強化が必要だと考える」 | ・背景(少子高齢化)
・現状や影響(人手不足、生産性低下) ・自分の立場(政策強化の必要性) |
情報技術の発達と個人のプライバシーについて自由に論じなさい | 「情報技術の急速な発達により、私たちの個人情報は常に漏洩のリスクにさらされている中、便利さと引き換えにどこまでプライバシーを犠牲にすべきなのだろうか。私は、利便性よりも個人の権利保護を優先すべきだと考える」 | ・現状(情報技術の発達とリスク)
・問いかけ(どこまで犠牲にすべきか) ・自分の立場(権利保護優先) |
環境問題について論じなさい | 「現在の環境問題のなかでも、特にプラスチックごみによる海洋汚染は深刻さを増している。そこで私は海洋汚染防止の観点から○○の対策を取るべきだと考える」 | ・抽象テーマの具体化(環境問題→海洋汚染)
・問題の焦点化 ・解決策の提示 |
教育のあり方について論じなさい | 「デジタル技術の急速な発展に伴い、従来の教育方法は見直しを迫られている。これからの時代に必要な教育とは○○である」 | ・社会背景(デジタル技術の発展)
・問題意識(教育方法の見直し) ・明確な主張 |
問題が抽象的なときに問題提起をする
入試問題のなかには、「〇〇について自由に論じなさい」といった抽象的な課題も多く出題されます。このような場合、自分で具体的な問題意識を設定し、焦点を絞ることが重要です。
抽象的なテーマが与えられた場合、まずはそのテーマから連想される具体的な課題や社会問題を考えてみましょう。
例えば「環境問題について論じなさい」という抽象的な問題であれば、「現在の環境問題のなかでも、特にプラスチックごみによる海洋汚染は深刻さを増している。そこで私は海洋汚染防止の観点から○○の対策を取るべきだと考える」というように、環境問題の中から特定の課題を選び、問題提起をすることができます。
また、時事問題や社会的な背景を考慮して問題提起をすることも効果的です。例えば「教育のあり方について論じなさい」という問題であれば、「デジタル技術の急速な発展に伴い、従来の教育方法は見直しを迫られている。これからの時代に必要な教育とは○○である。」といった問題提起ができます。
先ほども言ったように、問題提起の基本は「〇〇だろうか」ですが、どのような問題でも「だろうか」という疑問形にすると、くどい印象を受けます。
例えば「スポーツを行う意義について論じなさい」という問題があったとして、「私たちがスポーツを行う意義はどこにあるのだろうか」と書き始めると、採点者が読んだとき「だろうかじゃねえよ!さっさと意義を書けよ」となります。
この問題の場合、スポーツを行う意義があるという前提で書く必要があるので、問題が分かり切っていることや問題の前提が決まっている場合は、問題提起をわざわざ「だろうか」などの疑問形で書く必要はありません。
問題提起をする必要のある問題の前提までは、どのような問題でもオウム返しでよいですが、問題の前提の先は問題に合わせて書いていきます。
先ほどの「スポーツを行う意義について論じなさい」という問題ならば、「スポーツを行う意義とは○○である」または「〇〇や××という背景がある中で、スポーツを行う意義とは○○である」というふうに書き出します。
この問題のキーワード「スポーツ」、前提「それを行う意義」についてはオウム返しにして書き始めます。
また抽象的な課題に対して問題提起が思いつかない場合は、自分自身の興味や知識がある分野に焦点を当てることで、書き出しやすくなりますし、説得力のある論を展開しやすくもなります。
ただし、あまりにも偏った視点や一般性に欠ける問題提起は避け、多くの人が納得できる問題意識を持つことが重要です。
問題提起というと難しい印象を受けますが、それほど難しいことではなく、やはり書き慣れる、書く練習を繰り返すことで問題に合わせて良い問題提起ができるようになります。
その他の問題提起の仕方
小論文において適切な問題提起は論の土台となります。
課題文型、資料型、あるいは型に沿った書き方など、問題形式によって問題提起の方法は少し異なります。それぞれの特徴と効果的なアプローチを見ていきましょう。
課題文型の場合
課題文型では、文章中の筆者の主張や論点を見極めることが重要です。
まず文章を注意深く読み、筆者がどのような問題意識を持っているのかを把握しましょう。
筆者が複数の視点を提示している場合は、それらを整理したうえで自分の意見を述べるとよいでしょう。
例えば「筆者は〇〇について△△と主張しているが、私はこの点について□□と考える」といった形で問題提起ができます。
文章の中核となるキーワードや重要な概念を用いることで、採点者に「課題を正確に理解している」という印象を与えられます。
課題文の内容を適切に引用しながら、それに対する自分の立場を明確に示すことで説得力のある問題提起が完成します。

資料型の場合
資料型の問題では、グラフや表などのデータから読み取れる特徴的な傾向や問題点を見つけ出すことが問題提起の鍵となります。
まず資料全体を俯瞰し、特に注目すべき数値や変化を見つけましょう。
例えば「このグラフからは〇〇の増加傾向が顕著であり、これは△△という社会問題を示唆している」といった形で問題提起ができます。
単にデータを羅列するのではなく、そこから何が読み取れるのか、どのような社会的意味を持つのかを自分なりに解釈することが重要です。
複数の資料が提示されている場合は、それらの関連性に着目し、資料間の共通点や相違点から問題点を浮かび上がらせることで、より深みのある問題提起が可能になります。
型に沿って書く
問題提起をする際には、一定の型に沿って書くと論理的で分かりやすい文章になります。
まず「何が問題なのか」を明確にし、次に「なぜそれが問題なのか」という理由を簡潔に述べます。
続いて「その問題に対する自分の立場」を明確に示し、最後に「これから論じていく内容の概要」を予告するという流れが効果的です。
例えば「〇〇という現象は△△の観点から問題だと考えられる。なぜなら□□だからだ。私はこの問題について◇◇と考える」という形式です。
このように型を意識することで、読み手にとって論点が明確になり、その後の展開も予測しやすくなります。
型に沿った問題提起は、小論文全体の方向性を決める重要な役割を果たします。
問題提起の書き出し4例
小論文で効果的な問題提起をするためには、書き出し方が重要です。
以下に4つの例文を紹介します。それぞれの特徴を理解し、状況に応じて使い分けることで、読み手の関心を引き、論点を明確にする問題提起ができるでしょう。
例文1
〔書き出し例〕
現代社会において、インターネットの発達は私たちの生活を大きく変え、特にSNSの普及により、属性や人種、国境の境なく迅速なコミュニケーションが可能となった。一方で、SNSの利用増加に伴い、依存症やネットいじめなどの問題も深刻化している。これらの問題は特に若年層において顕著であり、適切な利用教育が求められている。
そこで私は小学校からの教育を通じて、SNSを適切に利用するというかたちで向き合っていくべきだと考える。まず・・・
例文2
〔書き出し例〕
少子高齢化が進む日本において、地方の過疎化は深刻な社会問題となっている。若者の都市部への流出により、地方では労働力不足や伝統文化の衰退、商店街のシャッター化など様々な課題が生じている。
このような状況に対して、地方創生という観点から多くの対策が試みられているが、効果的な解決策はまだ見出されていない。そこで私はリモートワークの推進と農業後継者を目的とした若者の地方移住政策を提言したい。
例文3
〔書き出し例〕
近年、人工知能(AI)技術の急速な発展により、私たちの働き方や生活様式が大きく変わろうとしている。AIが人間の仕事を代替するという懸念がある一方で、新たな産業や職業を創出する可能性も秘めている。例えば、単純作業や定型業務はAIに任せ、人間はより創造的で高度な判断を要する業務に注力するという働き方のシフトが始まっている。
このような技術革新の波の中で、人がAIを適切に活用できる力が必要であり、そのためには小学校などの義務教育の過程からAIの基礎やその活用方法を学ぶべきである。
例文4
〔書き出し例〕
教育における多様性の確保は、グローバル社会を生きる上で重要な課題である。従来の一斉授業や画一的なカリキュラムでは、個々の学習者の特性や強みを十分に伸ばすことが難しいという認識が広がっている。特に、発達障害や学習障害を持つ児童・生徒、外国にルーツを持つ子どもたちなど、様々な背景を持つ学習者にとって、教育環境の柔軟性は学びの質に直結する。
そこで、私はデジタル教科書を利用して一人ひとりの理解度の進捗に合わせた授業を行うこと、並びに自分のルーツを探る総合的な歴史の授業を行うことを提唱したい。
問題提起の注意点
上の4例文とも提言口調になってしまいましたが、大学入試や就職試験の小論文では目新しいことを提言する必要は無いですし、特に人と違うことを書こうという意識は必要ありません。
あくまで問題に沿って、問題提起をして論点を見つけ書くということを意識してください。
問題提起の考え方のポイントは、まず「何が問題なのか?」「なぜ問題なのか?」「その問題が続くと、どのような影響があるのか?」を考えて書いていきます。
また書く文字数が600字以下で書く必要がある場合は、問題提起をするときは1文か2文でさらっと問題提起を書き、800~1000字の場合で問題提起を少し詳しく書けるかなという程度です。
問題提起を「する・しない」、「だろうか」に限らない問題提起の仕方は、あくまで問題に沿って行うということを意識して書きましょう。
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