「社会の分断」というテーマで小論文を書くのに悩んでいませんか?
経済格差や価値観の対立など、現代社会の分断は複雑で、どう論じれば良いか迷うことも多いでしょう。
本記事では小論文で「社会の分断」を論じる際の多角的アプローチと説得力のある書き方を解説します。
分断社会について考えることは単なる受験対策ではなく、未来の社会統合に貢献する社会的意義のある営みです。
ぜひこの記事を参考に、深みのある小論文を目指しましょう。
今回学ぶこと
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小論文のテーマ「社会の分断」
現代社会において「分断」は重要なキーワードとなっています。小論文でもこのテーマは頻出であり、多角的な視点から論じることが求められます。
以下では、社会の分断について考える上で押さえておきたい主な側面を解説します。
経済格差の分断
経済格差の拡大は現代社会における分断の最も顕著な要因の一つです。
日本でも貧富の差が広がり、所得や資産の不平等が社会の一体感を弱めています。
特に注目すべきは、単なる所得の差にとどまらず、教育や医療へのアクセス、居住環境など生活全般に格差が波及している点です。
例えば、経済的余裕のある家庭の子どもは良質な教育機会を得やすく、それが将来の所得にも影響するという「格差の再生産」が進行しています。
また、コロナ禍では非正規雇用者と正規雇用者の間の格差がさらに拡大し、同じ社会に暮らしながらも全く異なる現実を生きる「分断された日本」の姿が浮き彫りになりました。
小論文では、こうした経済格差の実態を踏まえつつ、格差是正ための具体的な解決策が求められています。
価値観の分断
価値観の分断は、人々が重視する考え方や優先事項が異なることから生じる対立です。
例えば、経済成長と環境保護、伝統の維持と革新の推進、自由と安全など、二項対立的に捉えられがちな価値観は、社会的議論を複雑にします。
特に日本社会では、世代間での価値観の相違やリベラルや保守といったイデオロギー的対立が顕著になっており、雇用観や家族観などでも認識の差が見られます。
小論文では、これらの価値観の違いを単なる対立としてではなく、相互補完的に捉え直す視点が評価されます。
また、価値観の多様性そのものを社会の豊かさとして再評価し、対話を通じた相互理解の可能性を示すことも効果的でしょう。
属性カテゴリーの分断
属性カテゴリーの分断とは、年齢、性別、国籍、学歴、職業など、個人が持つ特性によって社会が分断される現象を指します。
例えば、正規・非正規雇用の格差や、都市部と地方の経済的・文化的格差などが該当します。これらの分断は単なる差異にとどまらず、機会の不平等や社会参加の障壁として機能することがあります。
小論文では、こうした属性による分断が固定化されると、社会全体の創造性や問題解決能力が低下する点を指摘できます。
解決策としては、多様な属性を持つ人々が交流できるコミュニティの形成や、属性に関わらず能力を発揮できる社会制度の構築などを論じると、具体性のある議論となるでしょう。
分断社会について小論文ではどう書く?
分断社会をテーマにした小論文では、その原因と解決策を多角的に分析することが重要です。
とくにアメリカ社会の現状は具体例として取り上げやすく、トランプ政権下での分断の深刻化は説得力のある論点となります。
経済的な格差の是正
経済的格差は社会分断の根本的要因の一つです。
トランプ政権下のアメリカでは、富裕層優遇の減税政策により、所得格差がさらに拡大しました。
上位1%の富裕層が国の富の約40%を占める状況は、「アメリカンドリーム」という社会的神話を崩壊させています。
この経済格差は単なる所得の差にとどまらず、医療アクセスや教育機会の不平等を生み出し、社会階層の固定化につながっています。
小論文では、格差是正のための累進課税の強化や、社会保障制度の拡充などの具体的政策を提案することで、経済的公正に基づいた社会統合の可能性を示すことができるでしょう。
格差解消が社会の一体感を取り戻す第一歩となることを論じると説得力が増します。
価値観の見直し
アメリカ社会における価値観の対立は、保守層とリベラル層の二項対立として顕在化しています。
トランプ政権は伝統的価値観への回帰を掲げ、支持層の結束を強めた一方、多様性や包摂性を重視する層との価値観の溝を深めました。
この分断を乗り越えるには、異なる価値観を単に否定するのではなく、対話を通じて共通の基盤を見出す姿勢が重要です。
小論文では、対立する価値観の背景にある共通の願い―安全や繁栄への希求―に焦点を当て、相互理解の可能性を探る視点が評価されます。
また、メディアリテラシー教育の充実により、極端な二項対立を超えた複雑な現実認識を養うことの重要性も指摘できるでしょう。
自分のコミュニティー以外を敵とみなす
トランプ政権下のアメリカでは、「我々対彼ら」という二項対立的思考が強まり、異なるコミュニティを「敵」と見なす傾向が顕著になりました。
SNSのアルゴリズムがエコーチェンバー(同じ意見が共鳴し増幅する空間)を形成し、異なる意見との接触機会が減少したことで、この傾向は加速しています。
移民政策や人種問題をめぐる議論では、相手の立場を理解しようとする姿勢より、自陣営の正当化に終始する対話が目立ちます。
小論文では、共通の国家的課題(気候変動や教育など)に対する超党派的な取り組みの実例を挙げ、協働の可能性を示すことが効果的です。
また、多様な背景を持つ市民が日常的に交流できる「第三の場」の創出が、分断を緩和する方策として論じられるでしょう。
出題されそうな問題(2例題)
「社会の分断」をテーマとして出題されそうな例題と解答例を2つずつ挙げてみました。
以下、実際に書くときの参考にしてみてください。
【例題1】
近年、SNSの普及により社会の分断が進んでいるという指摘がある。この状況に対して、あなたはどのように考えるか。自分の考えを800字程度で述べなさい。
【解答例】
SNSの普及に伴い社会分断が深刻化しているという指摘は正しい。しかし、この問題は技術そのものより、その利用のあり方に起因しており、適切な対応によって克服可能だ。SNSが分断を促進する主な理由は、アルゴリズムによる「フィルターバブル」の形成にある。利用者の好みに合わせて情報が選別されるため、既存の価値観を強化する情報のみに接触し、異なる意見と出会う機会が減少する。トランプ大統領の支持者と反対者がまったく異なる情報環境に生きているような状況は、この現象の顕著な例だ。また、SNS上では過激な意見ほど拡散されやすく、対立を煽る言説が優位になりやすい。さらに、オンライン上の匿名性が相手への共感や理解を妨げ、過激な発言を容易にしている
しかし、SNSが必然的に分断を招くわけではない。むしろ、適切に活用すれば社会統合のツールになりうる。例えば、多様な意見に触れる機会を意図的に増やすアルゴリズムの採用や、異なる立場の人々が対話するプラットフォームの構築が考えられる。実際、アメリカでは「Living Room Conversations」のような取り組みがオンライン上でも展開され、政治的立場を超えた市民対話の場となっている。
また、メディアリテラシー教育の充実も重要だ。情報の信頼性を評価する能力や、異なる意見に開かれた姿勢を育むことで、フィルターバブルに閉じこもることを防げる。フィンランドのように、初等教育からメディアリテラシーを重視する国々では、偽情報の影響を受けにくいという研究結果もある。
社会分断の問題は、SNSという技術の否定ではなく、その民主的かつ建設的な活用方法を模索することで解決すべきだ。私たち一人ひとりが意識的に多様な情報源に触れ、異なる意見に耳を傾ける姿勢を持つことが、分断を乗り越える第一歩となるだろう。(731字)
【例題2】
グローバル化が進む現代社会において、経済格差や価値観の相違による社会の分断が深刻化している。この課題を克服するために私たちは何をすべきか、あなたの考えを1000字程度で述べなさい。
【解答例】
グローバル化の進展に伴い、経済格差と価値観の相違による社会分断が顕在化している。この課題に対処するには、包摂的な経済政策と対話の文化醸成が不可欠だ。経済格差の拡大は分断の主要因である。グローバル化により国際競争力のある産業や高度人材は恩恵を受ける一方、そうでない層は取り残されている。アメリカのトランプ現象はその典型例で、グローバル化の敗者である労働者階級の不満が、反エリート・反移民感情として表出した。日本でも非正規雇用の増加に伴い、安定した中間層が縮小し格差が拡大している。
また、価値観の多様化も分断を加速させている。特に伝統的価値観と多様性・包摂性を重視する価値観の対立は先鋭化している。トランプ政権下のアメリカでは、移民政策や人種問題をめぐり社会が二分され、共通の事実認識すら困難な状況になった。さらに、SNSの普及により同質的な意見集団(エコーチェンバー)が形成され、異なる価値観との接触機会が減少している。こうした分断を克服するには、まず包摂的な経済成長を実現する必要がある。単なる再分配政策ではなく、教育・職業訓練への投資を通じて、グローバル化から取り残された層のスキルアップを支援し、新たな経済機会を創出すべきだ。
次に、異なる価値観を持つ人々の間の対話を促進する場の創出が欠かせない。例えば、地域コミュニティにおける多様な背景を持つ住民の交流や、学校教育における異文化理解プログラムなどが考えられる。ドイツの「政治教育センター」のように、対立する政治的立場の間の建設的対話を促進する公的機関の設立も有効だろう。
さらに、メディアリテラシー教育の充実により、情報の批判的検討能力を高め、フェイクニュースや扇動的言説に惑わされない市民を育成することが重要だ。フィンランドのように早期からのメディア教育が成果を上げている例もある。
また、国や民族、政治的立場を超えた共通課題—気候変動や感染症対策など—に協働して取り組むことで、分断を超えた連帯感を醸成できるだろう。パリ協定のような国際的枠組みへの参加は、そうした協働の好例である。グローバル化がもたらす恩恵を最大化しつつ、その負の側面による分断を克服するには、経済的包摂と価値観の対話を両輪とした取り組みが不可欠だ。多様性を尊重しながらも共通の基盤を見出す社会への転換が、今私たちに求められている。(974字)
「分断社会」を小論文で考える社会的意義とは?
分断社会をテーマにした小論文を書くことには、単なる課題の達成を超えた重要な意義があります。
社会の分断という課題を若い世代が深く考察することは、将来の社会統合への第一歩となります。以下では、その具体的な意義を解説します。
分断を緩和・是正して、誰もが生きやすい社会にすること
社会の分断を考察する最大の意義は、多様な人々が共に生きやすい社会の実現に貢献できる点にあります。
現代社会では経済格差や価値観の相違によって人々の間に壁が生じ、相互理解が困難になっています。
この問題を小論文で掘り下げることは、分断の実態を認識し、その解決策を模索するプロセスそのものです。
例えば、地域間格差や世代間の価値観の違いを分析することで、異なる立場への想像力が養われます。
小論文という形式で分断社会を考えることは、単なる学術的訓練ではなく、社会の一員として分断を乗り越える対話の技術を身につける実践的な学びになるのです。
分断の原因、分析が必要
分断社会を小論文で論じる際に重要なのは、表面的な現象だけでなく、その根本原因を多角的に分析することです。
経済的要因、情報環境の変化、アイデンティティ政治の台頭など、分断を生み出す複合的なメカニズムを理解せずには、有効な解決策を提示できません。
小論文でこうした分析を行うことは、社会問題を論理的・体系的に考察する力を養うとともに、単純な二項対立では捉えられない社会の複雑さへの理解を深めることにつながります。
とくに高校生にとって、分断の原因を多層的に分析する試みは、批判的思考力や複眼的視点を培う貴重な機会となり、将来の市民としての資質向上に寄与するでしょう。
アメリカでの分断を他人事とは思わない
現在のアメリカ社会における深刻な分断状況は、日本にとって他人事ではありません。
トランプ政権下で顕在化した二極化した政治状況や、SNSを通じた情報の分断は、グローバル化する世界において普遍的な課題となっています。
日本でも「保守」と「リベラル」の対立構図が徐々に強まり、コロナ禍では価値観の分断が表面化しました。
小論文でアメリカの事例を参照しながら分断の問題を考えることは、日本社会のこれからを展望する上で重要な視座を提供します。
他国の分断状況から学ぶことで、自国が同様の道をたどらないための予防策や対応策を検討できるのです。
世界の動向を自分自身の問題として捉える姿勢は、グローバル市民として不可欠な資質といえるでしょう。
言論の自由と実際の政策への乖離
分断社会における重要な論点の一つが、言論の自由と政策実行の間に存在する緊張関係です。
民主主義社会では多様な意見表明が保障される一方、実際の政策は全ての人の権利や尊厳を守るものでなければなりません。
例えば、選択的夫婦別姓に反対する意見を表明することは言論の自由として認められますが、制度として選択肢を認めないことは個人の権利を制限することになります。
小論文でこうした複雑な問題を考察することは、言論の自由という民主主義の根幹的価値と、マイノリティの権利保護という公共政策の目標の間にある微妙なバランスを理解する機会となります。
社会的分断を乗り越えるには、異なる立場からの意見表明を尊重しつつも、最終的な政策判断においては個人の選択の自由や多様性を確保する視点が不可欠であることを学べるのです。
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