小論文の試験で書く文字数は、試験区分によって異なってきますが、大体800字前後で書かせることが多くなっています。
でも、受験生の人からは「そんな800字も書けないよ!」という声をよく聞きます。
確かに、私も受験生のときに「はあ~、800字も書くのかよ」と思いました。
しかし、適切な書き方を踏まえて練習すれば、小論文の800字というのはあっという間に埋まります。
では、「どう書いていけばいいの?」「書く時間配分は?」ということも踏まえて、小論文の例文や解答例をもとに見ていきたいと思います。
まずは小論文の例文をみる
いきなり800字の例文を見ると、書く気が失せてしまうので、まずはそれよりも短い例文で、どのような感じで書いていけばよいか見ていきましょう。
まずは「お笑い」をテーマに例文を書いて見ます。
テーマ:お笑い
例文
私は、「お笑い」が必要なものだと考える。なぜなら「お笑い」は、人の緊張をほぐし、ストレスを解消し、何より「明日も頑張ろう」との活力を与えてくれるからだ。例えばお笑いを見て笑うことで、単にストレス解消という精神的なものだけでなく、人の免疫機能が高まるといった身体的な効果も報告されている。
確かに、中には下品なネタや、特定の人を笑いものにする低俗な「お笑い」が存在することも事実であり、「お笑い」という名に値しないものもある。
しかし、その低俗な「お笑い」を除けば、基本的にお笑いというものは、精神・身体の両面で人が生きる上での活力を与えてくれる。したがって「お笑い」は人が生きていく上で必要不可欠なものだと考える。
「確かに」で、予想される反論を挙げ、次の「しかし」で反論を補う根拠を示して結論をまとめる最も基本的な書き方です。
まず問題ごとに、その問題に合わせた基本的な「書く型」に沿って書いていきます。
物事には「守・破・離」という言葉があり、小論文も例外ではありません。まず「守」の段階である「書く型」に、自分の書くことを当てはめて書きましょう。
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小論文800字の書き方を解説
ここでは800字の小論文を書く際に、どう書いていけば無駄なく効率的に書けるかということを「書く構成」を中心に見ていきます。
小論文は制限時間との闘いなので、この構成をいかに効率よく作り上げることができるかが合否を決める重要なポイントとなります。
まず、小論文は試験が始まってから、いきなり原稿用紙に書き始めてはいけません。
何をどう書くかがきちんと決まっていない段階で書き始めると、文章があらぬ方向に向かってしまったり、書いては消すという大きな時間のロスにつながるからです。
何も構成を決めずにすぐ文章を書くことは、よほど書き慣れている人でなければできません。
では、どうするのかといえば、問題に沿ってアウトライン(構成)を書くことから始めます。
これは大まかに言うと、小論文の基本構成である「序論・本論・結論」に分けてアウトラインを作成していきます。
以下、実際の例題からアウトラインを作り、800字の小論文を書く方法を見ていきましょう。
例題
あなたの目指す教師像とは、どのようなものか、本県の教育理念を踏まえた上で述べなさい。〔教員採用試験〕
【アウトライン】
《序論》
本県の教育理念「一人ひとりの子どもたちに向き合う教育」を踏まえ、生徒一人ひとりをきちんと見て、日々の学習と結びつけ、その可能性を引き出す教師を目指す。
《本論》
小学校の教員を志望。例えば、ある生徒が教科学習は苦手でも、走るのが速い。その生徒には、「○○君は走るのが速いね。 算数や国語もできると、ペース配分やインタビューにも答えられてカッコよく見える」と自ら「そうか、やってみよう」という気にさせる。
《結論》
それぞれの教科学習が、その得意なことにどのように役だつのかを伝えれば、学習にも意欲がわき、同時にその子自身も伸ばせる。このように、生徒一人ひとりの可能性を見極め、その可能性を引き上げられる教師を目指したい。
上記のように「序論・本論・結論」のパートに分けて、簡単な構成を書いてから原稿用紙に解答を書きます。
これは詳しく説明すると、問題形式ごとにメモ・テンプレートを作るなどしてからアウトラインを作ることを私は推奨していますが、ここではどの問題形式でも共通する書き方を示しています。
少なくとも上記の例題のように、問題を読んでからアウトラインを作成することにより、制限時間内に効率よく質も確保した文章が書けるようになります。
小論文800字を書く時間はどのくらいか?
大枠の書き方を把握したら、次に行うことは書く時間配分を設定することです。
初めて練習するときは制限時間は意識しなくてもよいのですが、徐々に意識して行いましょう。
目安としては書く文字数は、採点者の人が読みやすいように丁寧な字で書こうとすると、1分あたり15~20文字が書ける計算となります。
例えば、試験時間60分・800字以内であれば、最初の5~10分のアウトライン作成と、解答の見直しの5~10分を引いた時間である40~50分が書く時間となります。
そして1分あたりの書ける文字数をあてはめると、40分ならば、その15~20倍で600~800字、50分ならば750~1000字を書ける計算になります。
一見するとかなり余裕があるように見えますが、実際には試験当日の緊張感や、自分にとって書きやすい問題かそうでないかによって書ける文字数は変わってくるので、時間に対する書くことのできる文字数はギリギリだと見てください。
確かに、走り書きや読まれることを考慮しないのであれば、1分あたり書ける文字数はもっと多くなりますが、小論文の試験では採点者の人に読んでもらえないことには、まず合格点を取ることができません。
制限時間を踏まえながら、自分の字が下手でも丁寧な字で書くということを練習の時から心がけましょう。
また書ける文字数は、あくまで基準で幅があるので、書き慣れてきたら実際に自分で書く時間を計ってみてください。
試験前までに、自分の書ける文字数をきちんと把握しておかないと、「書く時間が足りなかった」など最悪のケースにつながるので、練習段階でしっかり把握しておきましょう。
おさらい
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小論文800字の例文解答例
ここでは小論文の解答例を2例ほど挙げて、本記事の総復習を行います。みなさんも今回の復習のつもりで、「自分ならどう書いていくか」を考えながら見ていきましょう。
例題1
あなたの目指す教師像とは、どのようなものか、本県の教育理念を踏まえた上で述べなさい。〔教員採用試験 試験時間60分・800字以内〕
【アウトライン】
《序論》
本県の教育理念「一人ひとりの子どもたちに向き合う教育」を踏まえ、生徒一人ひとりをきちんと見て、日々の学習と結びつけ、その可能性を引き出す教師を目指す。
《本論》
小学校の教員を志望。例えば、ある生徒が教科学習は苦手でも、走るのが速い。その生徒には、「○○君は走るのが速いね。 算数や国語もできると、ペース配分やインタビューにも答えられてカッコよく見える」と自ら「そうか、やってみよう」という気にさせる。
《本論》
それぞれの教科学習が、その得意なことにどのように役だつのかを伝えれば、学習にも意欲がわき、同時にその子自身も伸ばせる。このように、生徒一人ひとりの可能性を見極め、その可能性を引き上げられる教師を目指したい。
【解答例】
「一人ひとりの子どもたちに向き合う教育」という本県の教育理念を踏まえて、 私の目指す教師像は、生徒一人ひとりをきちんと見て、日々の学習と結び付け、その可能性を引き出してあげることだ。これは、たんに教科の学習を行うことではなく、学習以外でも、その子の優れていること、得意なこと、可能性のあることを見極め、その可能性を日々の学習と結び付けて引き上げることだ。
私は小学校の教員を志望しているが、例えば、ある生徒が教科学習は苦手だが、走ることが得意なら、「○○君は走るのが速いね。算数や国語も、もう少しできるようになると、走るペース配分も考えられるし、完走後のインタビューにきちんと答えられて、カッコよく見えるよ」と生徒自ら「そうか、やってみよう」と思える助言を与えてあげることだ。
私がこう考えるようになったのは、小学校3年生のときの担任の先生が、「○○さんは勉強ができるだけでなく、人に教えるのも上手だよね」と言ってくれたことだ。それまで私は、自分はただ学校の勉強ができるだけで、他に何も取り柄などないと思っていたのだ。しかし、その先生の言葉をきっかけに、教科学習で同級生に教えるようになり、「○○さんの説明は、わかりやすくて助かる。ありがとう」と感謝され、人に説明できるよう学習に努めることで、さらに自らの学習にもつながっていった。そこから自分の可能性を発見し、教師の道を目指すようになった。
したがって、日々の学習も大切だが、その子の得意なこと、優れていることなど、生徒一人ひとりの可能性と結び付けて、それぞれの教科学習が、その可能性にどのように役立つのかを伝えれば、学習にも意欲がわき、同時にその子自身も伸ばせる。そこで身についた努力する大切さや自信が、生徒一人ひとりの、今後の人生における糧となるはずだ。このように、生徒一人ひとりの可能性を見極め、その可能性を引き上げる教師を目指したい。(788字)
例題2
現在、多くの民間企業で定年制が採用され、そこで働く従業員は一定の年齢に達すると退職することとされている。もし仮に、法律により全ての民間企業に対して定年制の廃止を義務付けることが提案された場合、あなたはどのように考えるか。このような提案のメリット・デメリットを踏まえた上で、賛否とその理由も含め、あなたの考えを論じなさい。なお、賛否を示すときは理由だけでなく、その背景または補足を必ず入れること。〔大学入試 制限時間70分・800字以内〕
【アウトライン】
《序論》
(定年制廃止の義務付け)
〈メリット〉:人手不足の緩和、採用コストの削減、熟練社員のノウハウの若手への継承
〈デメリット〉:世代交代が進みにくくなる、人件費の総和の増加、通勤・移動時の事故リスク
《本論》
定年制廃止の背景、少子高齢化での人手不足、増大する社会保障費の抑制。しかし、定年制廃止を法律で義務付けるのは反対。業種や抱える従業員数から困難。
《結論》
ただし定年制は維持した上で、社員の希望・能力・健康状態を考慮しての選択的雇用延長をするべき。
【解答例】
まず、民間企業の定年制廃止が導入された場合のメリットは、少子高齢化における人手不足の緩和や、それに伴う新規採用コストの削減、勤続年数の長い熟練社員による若手社員へのノウハウ継承など、膨大なコストをかけずに企業の事業継承が行いやすくなることである。
一方、定年制廃止のデメリットは、従来の定年退職者を雇用延長することにより、 企業内での世代交代が進みにくくなること。これにより新たな考えやテクノロジーの導入が行われにくくなり、企業体質が新たな時代への対応を困難にすることが考えられる。また日本では、多くの企業で年功序列という賃金体系をとっているため、高齢社員の雇用を延長すれば人件費の総和が増加し、業種によっては通勤や勤務中の病気や事故のリスクなど、企業のコストが増すことが挙げられる。
定年制廃止の動きが進む背景には、少子高齢化による人手不足を緩和することや、健康で意欲のある高齢者に働いてもらうことで、年金支給の後ろ倒しなど、増大する社会保障費を抑制することにある。このように見ると、定年制廃止は現在の社会的要請に沿ったものに見える。
しかし、私は定年制廃止を法律で義務付けることには賛成しかねる。それは定年制廃止を全ての民間企業に義務付けることは、例えば長距離バスの運転手など、高齢者が行うには困難な業種があるためである。確かに、少子高齢化の人手不足から、高齢者でも長く勤務してもらえることは企業にとって財産であり、長距離運転など直接の業務が困難ならば、若手への運転技術の指導や、事務など他の業務に就くことも考えられる。ただ、それでも定年制廃止に伴うすべての高齢社員がこのような業務に就くことは、中小企業の多い日本では、抱える従業員数の限界から困難だろう。その代りに、定年制は維持した上で、社員の希望、能力あるいは健康状態を考慮した上での「選択的雇用延長」の広い導入が求められている。(790字)
編集上、解答例の書き始めと改行時は1字下げになっていませんが、実際に解答を書くときは書き始めと改行時は1字下げて書きましょう。
また、800字の段落数は大体4段落です。
これは4で割って単純に「200字ごとに」ということではありませんが、800字の文字量から見て段落が4つあると、文章が整い、採点者の人にも読みやすい文章となります。
書く時間や文字数、書く文章量の感覚も含め、どこで区切って段落にするかというところは、話が変わるタイミングとしか言いようがなく、自分でそれなりに書く練習をして把握するしかありません。
800字の書き方は、方法自体はそれなりにお教えすることはできますが、それを教わったらやはり書く練習をしないことには感覚的なことも含めて小論文の書く上達はしないので、ぜひ本記事の内容を踏まえて書く練習をしていきましょう。
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