小論文の課題文型では、自分の意見を書かせる前に「この文章を〇〇字以内で要約しなさい」などの問題が出されることが多くなっています。
しかし、「要約ってどうやって書けばいいの?」「そもそも要約の書き始めから分からない!」と受験生のみなさんは苦戦しているようです。
とくに要約というと課題文の内容を切り貼りして、指定の文字数以内に収めようとしがちですが、それは要約ではありません。
そこで、この記事では小論文の要約のコツについて、課題文型の問題から見ていこうと思います。
小論文の要約付き課題文型の問題
ここでは課題文が付いた問題で要約がだされるときに、要約する際のポイントはどこなのかということについて、実際の例題も踏まえながら見ていきます。
実際の例題で要約を見る
小論文の要約は課題文が付いた問題で出されることが基本なので、課題文を例題にして見ていきます。
例題:次の文章を170字以内で要約しなさい。
課題文
民主制における選挙は、とかく消費活動に似ている。すなわち国民たる有権者は選挙で、掲げられた公約を見て、自分が一番良いと思う政党あるいは候補者を投票によって買う。もし良いと思える候補がいない場合は、棄権という現政権への白紙委任のかたちで買わないか、長く与党を担っている候補を買う。そして、時の政権や政治家に失態があった場合には、まるで商品を買った消費者のようにクレームをつける。無関心や棄権で現政権に対する白紙委任をしたことも含めて、自分たちが「政権を担う政治家を選んだ」という主権者意識が薄いのだ。もちろん時の政治家の言動は、当人が責任を負ってしかるべきことである。だが、その政治家を選んだ有権者に、果たして責任がないと言えるのか。民意を無視する政権が誕生したとして、国民たる有権者に責任がないと言えるのか。民主制について、そこに生きる私たち国民は、今いちど考える必要がある。〔大学入試〕
◆ 要約
民主制における選挙は、消費活動に似ている。国民である有権者は投票によって政党や候補者を買い、時の政権に失態があれば、責任なき消費者のようにクレームをつける。棄権という現政権への白紙委任も含め、自分たちが政権を担う政治家を選んだという当事者意識が低い。民主制における有権者の責任について、私たち国民は、今いちど考える必要がある。(169字)
【要約のポイント➀】課題文のテーマは何か?
【要約のポイント②】論点を見つける
課題文のテーマを見つけたら、次に行うことが論点を見つけることです。
論点とは、課題文の文章で筆者が自分の主張を展開するときに、どういう視点から見ていくのかというポイントです。
課題文の文章を書いた筆者は、読者に自分の考えを分かってもらいたいので、かなり分かりやすく論点を書いています。
したがって、課題文を読む方は、その見つけ方を知っておけば問題ありません。
その論点の見つけ方は、課題文中の同等言いかえ語「要は」「要するに」「つまり」や、逆説語「だが」「でも」「しかし」などの前後の文章に注目します。
これらの言葉が書かれていなくても、言いかえ語や逆説語を入れて成り立つ場所は論点の可能性が高くなります。
例題で見てみましょう。
【例題】: 下の文章を読んで、あなたの考えを書きなさい。
課題文
あなたは「葬式」という言葉を聞いたとき、どのような光景を思い浮かべるだろう。亡くなった人を偲び、悲しみの涙が見られ、生老病死の中でもっとも悲しく、否定的なものと見られることが多い。ところが、アフリカのある民族では、色とりどりの棺に亡くなった人を入れ、そのまわりで人々が踊り、祭りでも行うかのように楽しく笑って死者を送るのだそうだ。それは、あの世でも故人が楽しく暮らせるように、現世の最期に笑って死者を送り出すという考え方からきている。日本では到底考えられないことだが、世界にはそういう考え方をする民族もいるのだそうだ。
【要約のポイント③】結論を見つける
結論を見つけることは、筆者がもっとも言いたいことを見つけることです。
課題文となる文章を書いた筆者は、「〇〇のテーマについて何が言いたいのか?」という結論を必ず文章のどこかに書いています。
その結論を見つける作業が課題文を要約する際の最終的な作業になります。
先ほどの例題で見ていきます。
小論文の要約の書き始め
要約の書き始めも受験生の多くが悩むところで、「じゃあ、どう書いていけばいいのか?」ということについて見ていきます。
テーマそのものを書いてしまう
「書き始めをどう書いていけばいいの?」という答えとしては、まず書き始めにテーマそのものを書いてしまうということです。
課題文の要約でテーマをすでに把握しているので、そのテーマをそのまま要約の冒頭文に書いていきます。
例えば、「〇〇」というテーマがあったら、「〇〇について」と要約を書く冒頭文で書いてしまいましょう。
これで要約を書くレールが敷かれたことになり、あとは先ほど把握した論点と結論を課題文の文章内の言葉を使いながら、自分の言葉で多少補いつつ要約を書いていきます。
自分の言葉で補うのは最小限
課題文を要約するのに慣れてくると、ほとんど自分の言葉で要約しがちになりますが、あくまで課題文の言葉を使い、どうしても不自然になる部分のみ自分の言葉で言い換えるようにしましょう。
先ほどの課題文を要約すると
【要約】
あるアフリカ民族の考え方について、日本で「葬式」と言えば生老病死の中でもっとも悲しく、否定的なものと見られることが多いのに対して、アフリカのある民族は葬儀のさい祭りでも行うように楽しく笑って死者を送る。それは、あの世でも故人が楽しく暮らせるように、現世の最期に笑って死者を送り出すという価値観の違いからきている。
課題文の言葉を使いつつ、自分の言葉を最小限で使いまとめています。
また要約は、200字以下で問題に「改行や段落分けしなさい」など指示がなければ改行しなくても構いません。
要約の文字数が400~500字になる場合は改行します。
小論文の要約のコツは〇〇
ここでは要約を書く最終ポイントについて見ていきます。
要約を書くときの意識の持ちようなど、少し精神論のようなものになりますが、この意識は大切なのでしっかり見ていきましょう。
課題文の言葉を使う
先ほどもお伝えしましたが、要約は課題文の言葉を使い、文章をまとめる場面で必要最小限に自分の言葉を使います。
できるだけ課題文の言葉を使うのは、自分の言葉を使って要約があらぬ方向に行くのを防ぐためです。
自分の言葉を多く使ってしまうと課題文の本来の趣旨から外れ、全く的外れの要約になってしまう恐れがあり、そうなると採点者は「ああ、この受験生はきちんと課題文を理解していない」という判断になりかねません。
自分の意見は入れない
これも基本的なことですが、せっかく良い要約をしたのに、勢い余って課題文に対する自分の意見を書くことは避けましょう。
要約はあくまで、課題文を理解しているかどうかを見るためのものなので、自分の意見を付け加えてしまうと蛇足になってしまいます。
課題文の内容にある具体例などは、必要最小限に書いても構いませんが、要約はあくまで要約であって自分の意見を書く場所ではないので、慎みましょう。
「○○字で要約した後に自分の意見を書きなさい」という問題の指示ならば、要約した後に自分の意見を書けばよいとなります。
人に説明する気持ちで書く
これは要約を書いていくにあたって、もっとも大切な意識ですが、それは「課題文を全く読んでいない人に説明する気持ちで書く」ことです。
今まで見てきた要約のポイントも重要ですが、この「人に説明する気持ち」で書こうとすると、課題文の切り貼りにならずに、「後で人に説明しなければいけないから、課題文をしっかり理解しないと!」という意識で課題文を読むようなります。
例えば、課題文を読んでいない、あなたの友人や親御さんに「つまり、この課題文は何が言いたいの?」と聞かれとき、「つまり、この課題文は〇〇と言っているんだよ」と説明する気持ちで、要約を書いてみてください。
これで課題文の切り貼りをしていたら、「えっ?何言ってるの?よく分かんない」と言われてしまいますよね。
もちろん要約を書いていくので、説明口調の話し言葉ではなく「書き言葉」で書いていきますが、人に説明する気持ちを常に意識した上で今までの要約のポイントを踏まえると、良い要約が書けるようになります。
したがって、ぜひ「課題文を読んでいない人に説明する気持ちで書く」ことを意識して要約の練習を行っていきましょう。
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