大学入試では、小論文の対策がよく言われ、受験生も「練習しなきゃ!」と考えるのですが、就活での小論文となると「多少練習すればいんじゃね?」「てか、書き方を覚えたところで、あんま変わらないっしょ!」となってしまいがちです。
しかし、就活でも小論文の対策はしっかり行わないと落ちることになります。
たまたま運良く合格できた場合でも、就活での小論文の書き方を身に付けていないと、採用後、業務での文書作成の場面で、あたふたしてしまうことになりかねません。
そこで就活での小論文のテーマや、試験でよく設定される800字の例文から、就活試験での小論文の書き方を見ていきたいと思います。
就活の小論文は対策をしないと落ちる
就活での小論文の対策はきちんとするべきなのか? また企業は、小論文という試験を通して受験生の何を見ているのかについて見ていきたいと思います。
当然、対策と練習は行うべき
冒頭にも書いて、当然と言えば当然なのですが、就活での小論文も事前の対策や練習をきちんと行わないと高確率で落ちることになります。
小論文の対策をうたったものや、志望企業のOB・OGが「小論文の対策は、あまりやらなくてもいいよ」「まあ、3~4本かけばいいんじゃないの」と言うことがあります。
私もかつて就活のときに志望企業の社員の方に「小論文の練習では、どのくらい書けばいいんですか?」と聞いたところ「うん、3~4本書いて練習すればいいよ」と言われた記憶があります。
しかし、それを鵜呑みにしてはいけません。
ある程度の小論文が書ける人ならば、あまり対策をしなくてもよく、他の筆記試験や面接の準備に時間を当てると良いでしょう。
ただ、多くの受験生は、小論文のきちんとした書き方が身についていないので、しっかり対策をとって練習を行う必要があります。
就活の小論文で、企業は受験生の何を見ているのか?
就活で小論文を課す企業は受験生の何を見ているのでしょうか?
小論文は手書きで書かれた何百ときに何千もの答案を、企業の担当者が一つ一つ採点していくので、実施する側の時間とコストが大きくかかるものです。
しかし、この時間とコストを大きくかけても、企業には小論文の試験を実施して受験生の適正を見るメリットがあると判断しているので実施するわけです。
企業側が、小論文によって受験生を見る視点は2つあります。
まず1つ目は、他の筆記試験や面接では見ることのできない受験生の適正を見ています。
文章上での言葉遣いや社会人としての基礎力(経済産業省が提唱する「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの柱からなる)があるかどうか、自分の意見を根拠を持って述べることができるかどうかという論理性などを見ています。
2つ目は、その企業の考え方と受験生の適正が一致しているかどうかを見ています。
企業理念や経営方針、または採用される部署での業務に受験生の適正があるのかどうかを小論文を通して見ています。
とくに小論文の試験が実施された企業では、就職後はさまざまなところで文章を書くことが求められます。
そのようなときに、誰に見せても恥ずかしくない文章や、意見が求められたときに誰もが「なるほど!」と思える文章を書く力が必要になることは、言うまでもありません。
就活試験における小論文のテーマ
ここでは就活での小論文の頻出テーマや、書くときの姿勢について見ていきます。
小論文のテーマとして出されなくても、面接でも聞かれるような重要なテーマばかりですので、自分ならどう書くかということを考えながら見ていきましょう。
就活での頻出テーマ
頻出テーマ例
未来について | ・あなたの夢を述べなさい ・10年後はどのような人間になりたいと考えるか |
過去の経験について | ・自分が今まで最も努力してきたことを何か ・これまでで一番辛かった経験は何か |
社会や一般論について | ・今一番気になる出来事ついて書きなさい ・今気になっている社会問題について、あなたの考え ・「働く」とはどいうことか、あなたの考え |
企業や仕事について | ・わが社の○○の問題を解決するには、どうするべきか ・○○の売り上げを増やすにはどうすべきか ・仕事で心がけるべきことは何か |
学生自身について | ・学生時代に頑張ったことはなにか ・これまでに挫折の経験はあるか、またそれをどう乗り越えたか ・わが社への入社意欲はあるか ・どのような社会人になりたいか |
受験生の過去や未来のこと、企業の課題やそこでどのような仕事をしてくのか、などといったテーマが多く扱われます。
とっさに聞かれて答えに窮することのないように、普段からこれらのことは自分なりに考えておきましょう。
テーマに対しての書く姿勢
当たり前ですが、これらのテーマは企業の採用試験であるということを踏まえて答えましょう。
志望企業との関わりを抜きにした自分の夢や、やりたいこと、一般論としての社会人の姿を語っても意味がありません。
必ず志望企業の方針や業務と結びつけて答えるようにしましょう。
とはいえ、志望企業の方針や業務をホメまくる「ただのファン」や「太鼓持ち」は、良い印象を与えないので、企業研究や自己分析なども踏まえて、率直な自分の考えを書くようにしてください。
就活の小論文を800字で書いた例文
ここでは就活生の人から「書き方がよく分からない」と言われる、「一言テーマ」と三題噺の例題で、よく設定される800字の解答例から小論文の書き方を見ていきます。
自分で書くつもりで参考にしてみてください。
例題1:テーマ「人口減少社会」
テーマ「人口減少社会」(新聞社の採用試験 制限時間60分 800字程度)
この問題なら、例えば「人口減少社会の現状と課題について、あなたの考えを述べなさい」と付け加えて考えてみます。
「なぜ人口減少が問題なのか? これらが進むとどのような問題が起きるのか? それに対して、どのように対処すればよいのか?」などを考えてみましょう。
【アウトライン】
《序論》
「1 億総活躍」出生率の回復。しかし、ある程度の人口減に合わせた社会をつくるべき。なぜなら人口減に歯止めをかけても財政健全化の根本的解決にはならないから。
《本論》
確かに、出生率を回復させ高齢化率が低下すれば、既存の社会保障のまま国の債務解消も期待できる。しかし、進行する少子高齢化から見ても既存の社会保障をそのまま適用させるのは難しい。人口減に合わせた制度改革が必要。
《結論》
少子高齢化の中、多様な人的資源の必要性からも、ある程度の人口減に合わせた社会づくりが求められる。
【解答例】
先日、安倍内閣の改造に伴い「1 億総活躍社会」の実現が発表された。その一つに出生率の回復が挙げられ、人口減少に歯止めをかけて、財政健全化を図ろうとする動きがみられた。しかし、私はある程度の人口減少に合わせた社会づくり、財政健全化策を実施すべきだと考える。なぜなら、より一層高齢化が進行する中、人口減少に歯止めをかけても、増え続ける社会保障費の抑制をはじめ財政健全化の根本的な解決にはならないからである。
確かに、出生率を回復させ人口減少を食い止めることで、一時的には高齢化率が低下し、膨れ上がる国の財政赤字を抑えられるかもしれない。さらに高度成長期並みとは言わないまでも、出生率を回復させ、将来的に高齢化率をある程度低下させることができれば、新たな財源に依らず既存の社会保障制度のまま国の債務残高解消も期待できる。
しかし、近年の出生率が一時的に回復した時期を見ても、社会保障費の抑制と国の債務残高減少にはつながっていない。これらの問題の根本にあるのは、現在の社会保障制度が、労働力の増大と低い高齢化率を前提としたものであることにある。年金制度の賦課方式というのが、その典型である。もはや経済の低成長に少子高齢化の日本で、既存の社会保障制度をそのまま適用するのは難しい。人口減少社会に合わせた制度改革が必要である。
また、人口減少に合わせた社会づくりは何も経済のためだけではない。既存の社会制度によって見過ごされてきた社会的弱者に目を向けることにもつながる。なぜなら人口減少に合わせた社会をつくることは、限られた人的資源で社会運営を行うことになるため、すべての人が社会運営の要になる必要があり、すべての人が暮らしやすく活躍できる社会づくりが必要となるからである。むしろ少子高齢化の中、多様な人的資源の必要性からも、ある程度の人口減少に合わせた社会づくりが求められていると言えるだろう。(787 字)
例題2:「ホワイト、世界地図、常識」
問題:「ホワイト、世界地図、常識」(出版社の採用試験 試験時間60分 800字以内)
三題噺といって、単語を3つ並べて、その3つの言葉を全て盛り込んだ文章を書くことが求められます。
言葉どうしは、それ自体では全く関連性はなく、受験生の発想力が求められる問題です。
【アウトライン】
《序論》
世界地図を何気なく見る。世界には日本と異なる習慣や物の見方があることを思い出す。例えば、アフリカのある民族は、葬式のとき楽しく笑って死者を送る。
《本論》
国が異なれば、習慣も物の見方も異なるだろうと、ホワイトのようなまっさらな気持ちで見たいと思う。しかし、そうはいかない。つい、私たちは日本人の習慣や常識で物事を見てしまう。
《結論》
もちろん、日本国内であれば、その国の習慣や常識に沿って考えることは、社会生活を送るうえで合理的。だが、それが危うい。自国での「これが常識、非常識」のみでの物の見方は、自らの思考停止を生み出し、異なる考えの排除へ。
【解答例】
世界地図を何気なく見る。世界各地では、日本と異なる習慣や物の見方があることを思い出した。例えば、先日のとあるテレビ番組で紹介されていた、アフリカのある民族は、葬式のときにお祭りでも行うように、楽しく笑って死者を送るのだそうだ。それは、あの世でも楽しく暮らせるように、現世の最期に笑って死者を送る、という考え方に基づいているのだそうだ。日本では悲しみに包まれることが普通であり、死者の遺言でもない限り、楽しく笑って葬式を行うことなどあり得ない。
国が異なれば、それは習慣や物の見方も異なるだろうと、ホワイトのようなまっさらな気持ちで見たいと思う。しかし、なかなかそうはいかない。私たちはつい、日本人の習慣や常識で物事を見てしまう癖がある。もちろん、日本国内であれば、その国の習慣や常識に沿って考えることは、社会生活を送るうえで合理的であり、人間関係も円滑にしてくれる。
だが、それが意外と危うい。自国での「これが常識、非常識」に固執した物の見方は、自らの思考停止を生み出し、異なる考えを「おかしなもの」と排除しうるからだ。ときには「自国の常識・非常識」、または「自らの常識・非常識」という色めがねを置いて、国際関係なら相手の文化的背景や価値観、物の見方を踏まえたうえで考えてみることも大切だろう。これは日本人同士でも当てはまる。同じ物事や言葉でも話し合ってみると、認識や価値観の違いが判明することは、よくあることだ。
このように、自国での習慣や物の見方、自らの価値観や考え方は、絶対的ではなく相対的であり、他国の人や同じ日本人でも、その国の習慣や物の見方、その人なりの価値観がある。こういった背景を踏まえたうえで、議論や対話を通じ、こちらの考えを相手に分かりやすく伝えること。それが身近な社会生活でも、国際関係でも重要となってくるだろう。(765 字)
就活での小論文の書き方
就活での小論文の書き方も、大学入試での書き方と基本的な違いはありませんが、解答を郵送で送る試験方式であったり、書く文体をどうするのかといったことがあります。
それらの違いから、就活での小論文の書き方を見ていきましょう。
試験の受け方をチェックする
就活での小論文の試験は、会場で受ける場合と郵送で送る2つのパターンがあります。
まず自分の志望する企業の受験方法がどちらであるかを確認しましょう。
当日会場で小論文の試験を受ける場合は、制限時間が設けられており、限られた時間の中でいかに自分の言いたいことが的確にまとめられるかどうかが合否のカギとなります。
練習段階でアウトライン作成、本文作成、見直しの時間配分などを考えながら書いていきましょう。
郵送で送る試験方式の場合は、問題を読んで書く構想を練る時間がありますので、落ち着いてアウトラインを作成して書いていきます。
また郵送で送る場合は、信頼できる第三者の人に添削をしてもらい書き直すと、提出期限までに洗練された解答になるでしょう。
ただ、郵送で受ける方法の割合は、コロナ禍を経て増えてきたとはいえ、まだ直接会場で小論文の試験を受けさせる割合の方が圧倒的に多いのが現状です。
したがって、限られた時間の中で書く練習をすれば、どちらの方法でも対応できるので間違いがありません。
語尾は「だ・である」「ですます」のどっち?
就活の小論文の書き方で、文章の語尾は「だ・である」調がいいのか、「です・ます」調がいいのかと聞かれます。
これは就活の場合、どちらでも良いことになっていますが、それなら「だ・である」調で構いません。
言葉遣いが丁寧なことは良いのですが、「です・ます」だと書く字数を余計に割いてしまいます。
エントリーシートや志望理由書ならば「です・ます」調で書くべきですが、小論文は「だ・である」調で、無駄なく言葉を引き締めて書くことが良いでしょう。
どうしても「です・ます」調で書きたいというこだわりがないでのあれば、「だ・である」調で書くことをお勧めします。
こういう枝葉の作法にこだわるよりも、「自分の考え」と「その理由」に基づく一貫した論理性が就活の小論文でも求められるので、その基本を大切にしてぜひ書く練習をしていきましょう。
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